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チートなサムライ二人目09


「はい。お茶です」


 メイド服の男の娘。


 クロウは今日も絶好調。


 アイナ研究室は少し賑やかになった。


 イズミが居るためだ。


 無言で斬りかかってくる。


 いなすクロウ。


 あくまで意識上で、だ。


「むぅ。隙無し」


「イズミの言うところの無形の位でしょうか」


 京八流では無構えと呼ぶのだが。


「剣聖……」


「イズミでいいぞ」


「ではイズミ」


 碧眼に疲労が宿る。


 金色の髪は鮮やかだが。


「何をしに此処へ?」


 昨日の今日でイズミはクロウが気に入ったらしい。


 突撃隣の晩ご飯。


「クロウと死合いたい」


 本当にただそれだけ。


 イズミ。




上泉信綱かみいずみのぶつな




 その剣の血はオーガのソレも相まって強者を欲している。


 ましてクロウが、




源義経みなもとのよしつね




 ともなれば立ち合いたいのは必然。


 平家を敗北せしめた一大武将だ。


 その剣の冴えはさっきから散々味わっている。


「結構です」


 がクロウの答え。


 イズミと戦うだけ矜持に反する。


 負ければいいのだが手加減はこの際無礼だろう。


「確実に勝てる」


 とはさすがのクロウでも言えない。


 実際に底無し沼を観察するような心地だ。


 底の底がまるで見えない。


 イメージによる手合わせでは。


「剣聖も然もあろう」


 とは真っ当な評価と言えるだろう。


「けれど刀はどうするのです?」


 クロウはその点を突いた。


 クロウは刀を持っている。


 薄緑。


 本来の名を膝丸。


 伝説に残る名刀だ。


 あくまで魔術によるレプリカだが。


「仕方なく剣を使っている始末です」


 イズミはそう云った。


 両刃の剣。


 その鋭さは和刀に及ばず、尚薄緑には更に及ばない。


「というかその慣れない剣でその斬撃を繰り出せるのが脅威なのですが」


 薄緑を創り出すと、クロウはソレをイズミに投げた。


「おや、くださるので?」


「貸すだけです」


「ふむ」


 シャランと抜く。


溜抜ためぬきもできますか」


「ためぬき?」


「鞘から抜くときのクセで……ソレ自体が攻性を持っていますよね?」


「ああ、居合い」


「いあい?」


「抜刀術だ」


「ばっとうじゅつ?」


「京八流では溜抜と仰るのか」


 うんうんとイズミ。


「いわゆる納刀の状態から最速で剣撃を繰り出す技術だな」


「ですです」


「後刻では居合いと呼ばれるんだよ」


「ははぁ」


 剣聖も不足なく使えるとのこと。


 スッと剣を握って構える。


 体感温度が下がった気がするクロウ。


 冴え渡る空気。


 アイナとローズは気付いていない。


 ゆっくりと刀を振ると、


「おお」


 とクロウが驚いた。


 型通りの剣。


 そに忠実でありながら隙の一つもない。


 剣聖。


 その剣技の神髄だった。


「強いですね」


「クロウに言われるなら世話ないな」


 イズミの方もクロウを評価しているらしい。


 底を見抜かれているとはさすがに思っていないにしても。


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