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転生したら異世界でした07


 眼が覚めた。


 クロウは自分を認識する。


 鬼ヶ山の洞穴の中。


 オリジンの住まう場所で昨夜から二人暮らしとなった場所。


 枯れ葉で出来た布団に寝転がっている自分を発見して、起き上がる。


 オリジンは居なかった。


 既に起きて何処かに行っている程度は読み取れるが、さすがに場所までは通じていない。


 他にやることも無いためクロウは日課を消化することにした。


 鬼ヶ山での疾走。


 体力作りの一環だ。


「?」


 鬼ヶ山を駆けるのはこれが初めてではない。


 である故より顕著に違いが分かった。


 身体能力が向上しているのだ。


 それも生半なレベルでは無い。


 殆ど九郎だった頃の全盛期と類似するほどに機能が拡張されていた。


 無論のことクロウが納得できるはずもない。


 タタンと木々を蹴って高みを目指し、樹から樹へと飛び移って疾駆する。


 京八流の御手。


 鞍馬の御大こと鬼一法眼の剣法は障害物の多い山でこそ真価を発揮する。


 そう云う意味では天狗の剣を修めたクロウにとって鬼ヶ山での体力作りは適当に値するだろう。


 樹々を駆け回って汗を流し洞穴に帰ると既にオリジンも帰っていた。


 川魚を串に刺して焼いている。


 朝食を用意するためにオリジンが場を離れたことを察する。


「言ってくだされば小生が用意しましたのに」


「まだきさんは鬼ヶ山の全容を知るまい? 後日に魚の捕れる川やイノシシのねぐらを教えてやる。鳥は捕れるか?」


「ええ」


 首肯。


「頼もしいじゃ。では少しずつ慣れていけ」


 そう言って焼けた川魚をクロウは渡される。


 串を握ってはむはむと食べる。


 魚特有の旨みが舌を歓喜させた。


 良い餌を食べてきたのだろう。


 魚の身はそれほど美味であった。


「ところで先生」


 お互い朝食を取りながらクロウは尋ねざるを得なかった。


「小生に何かしましたでしょうか?」


「何か……というと?」


「何やら小生の身体能力が充溢しているのですけども……」


「ああ、血が馴染んだか」


 得心いった。


 そうオリジンは頷いた。


「血……ですか?」


「クロウを拾った時には既に狼に襲われておっての。血流が止まらなかったが故に仕方なくわしの血で補ったのじゃ」


「先生の血……ですか」


「然りじゃ」


 川魚をはむはむ。


「オーガ……鬼の血は人間に人外の力を授ける。もっとも金剛の先天性魔術を持つ鬼は純粋人に遅れはとらぬがな。それでも鬼の血を求める輩は大層いる。わしがこの山に隠遁しているのもソレが原因よ」


「人類に狙われていると」


「然りじゃ」


「そんな貴重な血を不肖ながら小生に」


 有りがたくもあり畏れ入りもあり。


「先に謝っとくの。すまんじゃ」


「いえ、命を助けて頂いたのです。報いる道はありませんが、せめて先生に尽くして少しずつでも返していけたらコレに勝るはありません」


「じゃがのう……」


「何か?」


「結果論で語ればクロウは既に人を逸脱しておる」


「でしょうね」


「それが不憫での」


「何かしら負の事が?」


「鬼の血は難老長寿の薬でもあるからの」


「なんろうちょうじゅ……ですか?」


「老い難く……死に難い……。突発的や悪意的な干渉が無く天寿を全うするには二、三百年を覚悟する必要がある」


「それはそれは」


 遠大すぎて実感が湧かないクロウであった。


「半鬼半人とでも言えば良いのか。既に人の領域をはみ出している。先述したがな」


「その人外の命を以て先生にお仕えします。何卒お見捨て無く」


「きさんはほんに人が良いの」


 焼き魚をむしゃむしゃ食べながらクロウの心を評価するオリジンだった。


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