チートなサムライ二人目01
「というわけで」
あはは。
乾いた笑いのアイナ。
「クエストをこなしてきました」
かけた時間は四日。
結構ゆっくり攻略したので時間はかかった。
無論、
「書類の検分が面倒くさい」
が根底にあったため、意図しての日数だが。
ちなみに苦労性の学院長は書類整理を終えている。
「では此方にサインを」
「ええ」
サラサラとペンを走らせるアイナ。
クエストは成功と言うより大成功だった。
特に四十二階層のモンスターマーチは感応石を無尽蔵に落としたのだ。
色々と都合が良かったのも事実。
剣護法をアイナとローズには知られたが、別に隠すことでもない。
「それで五百グラム以上の感応石十つですけど……」
「こちらに」
リュックから取り出してゴトゴトとおく。
「確認しました。クエスト完了を受領します。お疲れ様でした」
「あいあい」
そんなやり取り。
「ついでクエストに於ける立ち回りについて聞きたいのですけど……」
ギルド員はそう持ちかける。
「どうします?」
「アイナとローズの手柄に」
そんな念話でのやり取り。
ヴィスコンティを刺激するのは上手くない。
逆にローズを立てれば万事上手く行く。
実際に二十階層レベルでは無双した。
「ではその通りに」
そしてギルド員とアイナは防音処理の個室に入っていった。
ガーゴイルの羽やらボスシザーやら処理に困るドロップアイテムも存在する。
ギルドなら適正価格で買い取ってくれるだろう。
「お兄ちゃんは……面倒くさいね……」
「ですね」
否定はしない。
チョコレートミルクを飲む。
それはローズも同じだ。
「でもそうでなければローズを守れませんから」
「まだ……気にしてる……の……?」
「一生忘れられません」
ローズを殺そうとした一因。
クロウの不手際だ。
事実かどうかはこの際関係ない。
ただ単純に、
「自分が驕ったせい」
とクロウが悩んでいるのが根幹だ。
「お兄ちゃんのせいじゃ……」
「五割くらいは小生のせいでしょう」
「そうかな……?」
ローズには納得がいかない。
無論、その心情もクロウは理性では理解している。
「ま、いいじゃないですか」
軽やかにクロウは笑った。
「今こうして此処に居る。それだけで十分です」
「お兄ちゃん……」
照れ照れとローズは笑った。
「お兄ちゃんも……魔術を使えたんだね……」
「既に使っているでしょう」
薄緑。
その質量化。
立派な魔術だ。
「そじゃなくて」
「?」
「護法」
「ああ」
そこで悟る。
「修験道は密教とも繋がっていますから」
「しゅげんどう? みっきょう?」
「いえ。何でもありません」
前世については話さない。
自身の恥だ。
「まぁ不思議な御業といえば魔術でしょうけど」
実際に原理その物は一緒だ。
単純にネームプレートを変えただけ。
「どこまでも剣なんですね」
「剣術を極めるためですから」
サクリと自評。
「それで……リンボのモンスターマーチを……殲滅できるなら……世話無いんですけど……」
「その辺はまぁ生まれの業ということで」
「どこで護法なんて……学んだんです……?」
「大人には色々あるんですよ」
「お兄ちゃんは子ども……」
「頭脳は大人です」
色々と危なっかしい発言だ。
事実だが。
既に精神年齢なら四十年に近しい。
前世の業があるからこそ、今のクロウが居るのだが。




