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ダンジョンには夢がある弐20


「それにしても」


 今更だ。


 アイナの言葉は。


 既に実感は得ている。


 否定の余地も無い。


 それでも目の前の光景が信じられなかった。


「…………」


 無言で剣を振るう。


 リンボのモンスターが切り裂かれる。


 甲殻。


 金属。


 金剛。


 そんなモンスターも居る。


 だがそのどれもがクロウの剣の前には水で浸した紙同然だ。


 手にした和刀、


「薄緑」


 その切れ味は人外だった。


 曰く、


「罪人の首とともに膝まで切り落とした」


 とされる名刀。


 膝丸。


 そう初期に呼ばれる刀だ。


 土蜘蛛さえ切ったと言われる剣である。


 クロウが持つのはレプリカだが、逆に魔術の御業であるため真銘より不条理な日本刀と相成る。


 斬鉄剣。


 あるいはそう呼べるだろう。


 切る。


 斬る。


 伐る。


 ほとんど生け贄に近い。


 殺されるためだけに現われるモンスター。


 それを斬り滅ぼすクロウ。


 本当にモンスターの牙がクロウに届かないのだ。


 クロウの方は少し興奮している。


 自らの御業を誇ること無く振るえる環境は望むところ。


 であるから、


「楽しいですね」


 その通りにモンスターを殲滅する。


「クロウ様」


「お兄ちゃん……」


 少女二人は少し引いていた。


 然もあらんが。


 何処の世界に金属を切断できる刀があるというのか。


 が事実は事実として目の前にある。


「非常識」


 端的な言葉だが、よくクロウを表わしている。


「それにしても最難関ですか」


 スッと軽やかに剣を振るようで、


「――――」


 しかしてモンスターが苦痛に吠える。


 サクリと切り裂かれる。


 介錯。


 モンスターも生物である以上、


「首を断てば死ぬ」


 は必然だ。


 首の無いモンスターも居るが此処では論じない。


 サクサク。


 ザクザク。


 モンスターを切り捨てていくクロウ。


「いいですねぇ」


 辻斬りも同然な心地だが、


「全力で剣を振るえるのは心地よし」


 も確かに本音だ。


 名誉も矜持も無い。


 ただ襲ってくるだけのモンスターなら罪悪感も無い。


「ダンジョン……素敵です」


 ポツリと呟く。


「それもどうだろう?」


 アイナとローズが念話で共有した意見。


「まあバーサーカーですし」


「お兄ちゃんは……辻斬り……」


「剣の鬼ですね」


「剣鬼……」


「見事な表現です」


「あう……」


 そんな念話を交わす二人だった。


 クロウの知ったことではない。


 薄緑の切れ味。


 足すところの京八流。


 これで切り裂けない存在があるのか?


 一つの命題だ。


「あはは」


 軽やかにクロウは笑う。


 実際に酔っている。


 他者を斬るという感覚に。


「クロウ様」


「お兄ちゃん……」


 二人はクロウを微妙な目で見ていた。


「とりあえずは堪忍で」


 そう念話でやり取りする二人だった。


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