表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/203

ダンジョンには夢がある弐19


 三十一階層。


 此処まで来るとさすがに人も減る。


 Aランクの冒険者でも来ることの出来ない区画だ。


 とりあえずは魔術で火を点けて干し肉を炙る。


 それからガジガジと咀嚼する三人だった。


「結局最後に物をいうのは補給ですね」


 水。


 肉。


 麦。


 そんな感じ。


 炙ったチーズをパンにかけて食べる。


 コクのある美味しさが口内に広がった。


「美味しいです」


「畏れ入ります」


 ニコッと笑うアイナだった。


 チラホラ見られる冒険者たちは誰もが強そうで、クロウたちは胡乱げに見られる。


 一応知ってはいるのだろう。


 学院教授のアイナ。


 ギルマスを破ったクロウ。


 そして唯一のアイナ研究室所属のローズ。


「…………」


 もむもむと食事をしていると、


「おい」


 と声がかけられた。


 三人がソッチを見やる。


 冒険者がそこに居た。


 男性。


 老齢一歩手前と云った様子。


 ローブを着て杖を持っている。


 ベッタベタな魔術師だ。


 ここに来るくらいだから相応の実力はあるのだろうが、


「肉体は練られていませんね」


 がクロウの論評。


「何か?」


 代表でクロウが尋ねる。


「いや、その」


 紅に双眸を覗き込む魔術師。


「そっちがローズか?」


「あう……」


 指定されて怯む。


「アイナ教授?」


「何でしょう?」


「何故この娘を?」


「秘密です」


 単純に才能の結果だが、そこを教える気は無いらしい。


「この私ですら袖にしたのに」


「はあ」


 ぼんやりと。


 大凡分かっているが、


「要するにアイナ研究室から弾かれた」


 とのことだろう。


「決闘しろローズ」


「嫌です……」


「何故だ?」


「怖い……ですから……」


 ローズらしい言葉だった。


「畏れ入ったか?」


「です……」


 上機嫌に魔術師は笑った。


「お前様は腑抜けだな」


「です……」


 否定しない。


「大丈夫ですか?」


 クロウが念話でローズに問う。


「大丈夫……」


 思念で答えるローズ。


「ではアイナ教授?」


「何か?」


「ローズ以上の実力を持つ私を研究室に……」


「却下」


 サクッと。


 殆どノータイムだ。


「何故です?」


「邪魔」


 言葉を選ばないアイナだった。


 その辺はクロウも評価する。


「邪魔って……」


 青筋を立てる魔術師。


「では魔術の才を見せてください。そこからでしょう」


「では」


 と魔術師。


 長々と呪文を唱え、風の斬撃を放つ。


 安全フロアに生えている木を切り裂いて倒すのだった。


「二十三点ですね」


 サックリと。


「この威力でか!」


「はあ」


 ぼんやり肯定。


「むしろ今までリンボで生き残っているのが不思議」


 とは三人の通念だが、基本的に常識を名乗れるのは魔術師側だ。


 後衛からの支援が魔術である以上、魔術師が呪文を唱える時間を前衛が稼ぐのが必然であるからだ。


 ちなみにその程度の魔術ならアイナもローズも無詠唱で具現できる。


「ま、精進してください」


 それもどうかとは思うが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ