ダンジョンには夢がある弐17
結果。
「ふむ……」
言ってしまえば、
「無双」
の一言で済んだ。
二十階層レベル。
また一段と凶悪なモンスターが出たがローズは鎧袖一触に蹴散らす。
火と風。
あとは無属性か。
ローズの適性だ。
火は血統の関係か。
賞賛に値した。
「あう……」
呪文でもない怯みの言葉。
しかして生まれる灼熱。
モンスターを焼き滅ぼす。
距離さえあればローズが先手を取れるため有利だ。
「痛みに慣れていない」
そうも言える。
魔術師の立場は後衛だ。
前衛の騎士をフォローするのが役割。
傷つく時点で負けだ。
痛みに神経を支配されるとコンセントレーションが著しく低下する。
そのため魔術師は騎士の背後から支援するのが常。
とはいえ、
「何だかなぁ」
もクロウの感想だ。
赤光。
灼熱。
爆発。
衝撃。
爆音。
熱風。
「モンスターさんにとっても不条理だろう」
とクロウは言ったが、
「お前が言うな」
で完結する。
最難関ダンジョンを刀一本で切り伏せる。
あるいは魔術で無双するより不条理だ。
その辺の自尊はクロウと縁が無かったが。
「…………」
すっと手を差し出す。
無詠唱。
灼熱の大波が現われた。
焼き滅ぼされるモンスター。
防御も回避も間に合わない。
「どう思います?」
クロウは念話でアイナに問うた。
「規格外かと」
アイナは端的に評した。
「ですよね」
そこに異論は挟めない。
そうなると、
「アイナの実力って……」
「ま、相応ですね」
自負は在るらしい。
「心強い」
それは確か。
「とはいえ」
アイナの方も言いたいことはある。
念話。
「魔術の支援無しにリンボを攻略するクロウ様が何者為るやって……そんな感慨にふけりますけど」
「さほど大層でも無いんですけど」
一応謙遜する。
御大に比べればまだまだだ。
「本気で言ってます?」
「とりあえずは」
嘘ではない。
一度こちらの世界でも経験している。
超神速。
その領域を垣間見た。
御大の降霊憑依。
その実力。
であれば、
「まだまだです」
と心底から言えるクロウであった。
「剣術というより剣業ですね」
アイナが皮肉る。
言い得て妙だ。
剣のカルマ。
何かを極めるにあたって常識から幽離する。
人間を止める。
妖怪化するとも大和では言った。
「妖怪ですか」
納得気なアイナ。
思うところはあるらしい。
とりあえずローズを見やりながら念話で会話する二人だった。




