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ダンジョンには夢がある弐14


「ボスフロア……ですか」


 二十階層。


 特に感動で呟いたわけでもない。


 というよりクロウたちの目的にしてみれば通過点だ。


 易々と入る。


「…………」


 クロウは薄緑の血を拭うと鞘に収める。



 抜刀術の前段階。


「――――」


 ボスが吠えた。


 レッドトロール。


 赤い巨人だ。


「大きいですねぇ」


 以前にも見た記憶はあるが、


「何を食えばそんなに?」


 とも思う。


 トロールは見た目だけなら人間に近しい。


 無論凶暴性は比較にならないが、その人体構造の思索で、


「何が巨体を支えているのか?」


 は少し疑問に思うところだ。


 やることは一つだが。


「――――」


 一般人なら竦み上がりそうな吠え方も集中したクロウには信号としてしか処理されない。


 演算。


 試算。


 決着。


 後はなぞるだけ。


 出遅れたと以前は思ったアイナとローズだが、クロウの速度を理解している点では以前より親密の証左だ。


「溜抜」


 言葉は置き去りだ。


 パンと音が鳴ってクロウは着地する。


 レッドトロールと互いに背中合わせで。


 一歩。


 二歩。


 三歩。


 そこで漸くレッドトロールの首から頭部がずれて落ちた。


「ふぅ」


 汗を拭う仕草をするも胡散臭さは五割増し。


「クロウ様って何なんでしょうね?」


「ローズに聞かれても……困ります……」


 念話で話し合うアイナとローズだった。


 自分らの人外ぶりを棚に上げて、クロウの規格外について論評する。


「目で追えました?」


「結果しか……見えませんでした……」


「ですよねー」


「教授も……?」


「無理ですよ」


「人の認識で……捉えられない速度って……何でしょうね……?」


「クロウ様は神速と呼んでいるそうですが」


「神速……」


 念話のやり取りが続く。


 クロウがドロップアイテムをアイナに放った。


 感応石だ。


「どれくらい必要なんでしょう?」


 声で問われ、声で返す。


「この程度を五つほど」


「ボスを狩るのが手っ取り早いですね」


 またアイナとローズの念話。


「手っ取り早いって……」


「手っ取り早いのでしょう……」


「本気なんでしょうか?」


「お兄ちゃんは……あまり見栄を……お張りになりませんけど……」


 ニコニコ笑顔でボスフロアを通過しながら乙女のやり取り。


「一切無常ですね」


「お兄ちゃんは……お兄ちゃんです……けど……」


「子どもの頃からああでした?」


「怒られたり虐められたりしていました」


 前者はサウス王国。


 後者はモンスターの胃袋の中。


「無謀な」


「父はお兄ちゃんのこと……よく思っていませんから……」


「だからって息子さんを死地にやらなくとも」


「矜持を強かに……ですね……」


「大変ですね。ローズも」


「慣れちゃって……います……」


 そうして三人は二十一階層へと下りた。


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