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ダンジョンには夢がある弐10


 とりあえず時間として夜になったため三人は寝ることにしたが、


「…………」


 寝袋は一つだった。


 その代わり広い。


「えーと……」


「あう……」


 言いたいことは分かるのだが、躊躇する兄妹にニコニコとアイナ。


「では寝ましょう」


「これで?」


 と寝袋を差す。


「大丈夫です」


 何が?


 とは聞けなかった。


「テントを張れば防護結界は構築できますし襲われたり盗まれたりの心配はいりません」


「そういう問題かなぁ」


 とは言いつつクロウも冷静にはなってきている。


 初期のインパクトが強すぎただけだ。


「要するに同衾?」


「ですです」


「ふえ……」


 ローズは真っ赤になっていた。


 乙女にはショックだろう。


「慣れますから」


 ポンポンとアイナがローズの肩を叩く。


「ではクロウ様」


「何でしょう?」


「真ん中にお願いします」


「先生に怒られませんか?」


「ナニをするでもないですから」


「そりゃそんなつもりはないですけど」


「単純に一緒に寝るだけです」


「悪戯されそうで怖い」


「気にしすぎです」


「…………」


 半眼。


「私とて先生に恩ある身。裏切ることはいたしません」


「そこまで分かってるなら信じます」


 ゴソゴソと寝袋に入る。


 後から乙女が二人追加。


 テントを張って結界構築。


「えへへ。ドキドキしますね」


「そのつもりで用意したのでしょう?」


「ですです」


「お兄ちゃんは……平気なの……?」


「まだ思春期でもないので」


 精通もしていない。


 というより出来ないが正しい。


 威力としては規格外だが、生殖能力には目覚めていないのだ。


「えと……」


「何? ローズ」


「おやすみのチューを……」


「してほしいの?」


「はわわ……!」


 自分で言って狼狽えるのは愛らしい。


 暗くて夜目でも認識が難しいがローズの頬は朱に染まっていた。


「可愛い!」


 ギュッと抱きしめるクロウ。


 そして、


「おやすみ」


 染まったほっぺにキスをした。


「本当に兄妹なんですか?」


 アイナの疑問も尤もではある。


 距離が近い。


「ですよ?」


 クロウはサラリと躱した。


「クロウ様。私にも」


「はいはい」


 ほっぺにキスする。


「えへへ」


 こちらも愛らしかった。


「それにしても」


 と思ってしまう。


「オリジン様は今頃何をしてらっしゃるのでしょうか?」


 朝は釣り。


 昼は狩り。


 夜は風呂。


 なべて世はこともなし。


 そういう意味では今の状況はクロウにも都合は良い。


 見聞を広めるならセントラルは最適だ。


 名を挙げずに斬り滅ぼせる敵対者の存在もありがたい。


 無論ダンジョンを攻略すれば、その深度相応の名誉は与えられるが、


「しがらみの一つ」


 と許容している。


 名誉を嫌うクロウではあるが、そもそも剣を振るうならばどうしても付いてくるものでもあって、


「結局のところ」


 と嘆息もする。


 武士……こちらの世界で言う騎士は剣を振るった数だけ名が上がるのだ。


「相応の年齢になったら先生と一緒に山で引き籠り」


 あるいは将来の夢かもしれなかった。


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