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ダンジョンには夢がある弐09


「うーん。十一階層」


 安全なフロアである。


 金銭取引や物々交換が頻繁に行なわれている。


 やはりここでもクロウたちは人目を惹いた。


 ガキ二人と少女一人。


 実力と印象が負の正比例。


 既に知れ渡っている事実ではあるが、


「本当か?」


 と疑ってしまうのも宜なるかな。


 あまりその辺に拘るクロウたちでもないため総スルー。


 食事に従事する。


「四十階以下に行くんですか?」


「そのつもりですけど」


 クロウの言葉にサクッと答えるアイナ。


 パスタを食べている三人だった。


 さすがに十一階層は最難関とはいえ人気ひとけも多いので商売が成り立つ。


 階層を下に潜るほど、安全なフロアも物寂しくなっていく。


「とりま今日はここで一泊しましょう」


 そういうことになった。


「お兄ちゃん……平気……?」


 ローズが心を砕く。


「何ゆえ?」


「いっぱい戦ったから……」


「源平合戦に比べれば然程でもありませんし」


「げんぺい……?」


「いえ。何でもありません」


 ソレは前世の記憶だ。


「ローズこそ疲れていませんか?」


「お兄ちゃんのおかげで……」


「畏れ入ります」


「ふや……」


 あわあわとローズ。


「可愛いですねぇ」


 と心中で論じる。


 面と向かっては、


「体調を万全にしてくださいね」


 等と言う。


 パスタをアグリ。


「それで一泊ですか」


「私はドロップアイテムを換金してきます」


「よろしく願います」


 疎いクロウであったため采配は預ける。


 食事を終えてクロウはローズと水場に向かった。


 浴場ではなくオアシスだ。


 カップで水を掬って飲む。


「ん。美味しい」


「ですね……」


 サラリの飲み込め、渇いた喉を潤す。


 水筒にも水を多量に溜める。


 水筒として標準の大きさだが、魔術加工が為されており、空間以上の水を溜め込むことが出来るらしい。


「エルフにかかれば何でもあり」


 とクロウは思考を放棄した。


 換金し終えたアイナが戻ってくる。


「水浴びしませんか?」


「構いませんけど」


「あう……」


「いえローズ。無理はしなくていいですから」


 クロウと水浴びできればソレで良い。


 そんな感じ。


「ローズも……」


 結局三人で水浴びすることになった。


 覗き防止用に結界を敷設して水場に浸かる。


 結界はアイナのもの。


 ある意味これも後方支援。


 クロウでは出来ないことだ。


「誰にでも得手不得手はありますよ」


 そんなアイナの苦笑。


 そもそも現われるモンスターを見る端から切り捨てるクロウのバーサーカーぶりを思えば、戦力的に最も貢献しているのは彼だ。


「そうですけど」


 パシャッと水をかける。


 ひんやりとして心地よく、透明に透き通った水であるため清潔でもある。


「あう……」


 ローズは赤面していた。


 全裸なのだから当然だが、他二人は毛ほども気にしていない。


 アイナは別に同性の裸には興味なし。


 クロウの場合は経験値があったためがっつくこともしない。


 ましてローズは妹だ。


 理性くらいは働く。


 逆転すると事情はまた別になるが。


「心地良いですね」


「ええ」


「覗き防止の結界とは?」


「暗示です」


「暗示……」


「水場を意識から外すように結界を組んだんですよ」


「そんなことも出来るんですね」


「エルフですから」


 その一言で片付けるのもどうだろう。


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