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転生したら異世界でした05


「わしの名はオリジンという。きさんの名は?」


「クロウと申します」


 正座をして丁寧に頭を下げるクロウ。


「よし。クロウじゃな」


 頷いて鬼……オリジンは問う。


「鬼ヶ山が物騒なことは聞いておらんのか?」


「何でも人を喰らう鬼が出るそうで」


「わしじゃ」


 サクリとオリジン。


「鬼……ですか?」


「じゃな」


 コックリと首肯される。


「亜人の一種。オーガと呼ばれる種族じゃよ。人は喰わんが、この鬼ヶ山の主でもある」


「鞍馬山の御大のような物でしょうか?」


 とは心中でのクロウの考察。


 大和では一つの山に一柱の主たる天狗が住まうとされている。


 そう云う意味では鬼を山の主とする風習もさして驚くことでもない。


「で、クロウは何故物騒な夜の鬼ヶ山に入った?」


「死ぬためです」


「自殺かや?」


「偏に」


「何かしら生に絶望を?」


「然りです」


「詳しく聞かせい」


 言われてクロウは経緯を話す。


 要するに自分の驕りのせいで失望と悲哀を産んでしまった……と。


「何故ソレで命を棄てるまでに追い詰められる?」


「小生はもう小生のために不幸になる人間を見たくないのです」


「ソレを餓鬼が悟るには早すぎるじゃろう」


「これでも三十年ちょっとは生きています故」


「童がかや?」


「ここが如何な六道の何処かは存じ上げませんが……」


 と前置き。


「小生は三世の内における前世の罪を背負って生まれ落ちました」


「…………」


 沈黙するオリジン。


「功に逸り、兄を裏切り、妻子も付き従った仲間も失い、地獄を目指して自刃しました。ですから決めたのです。もし次に人間道に回帰したときは……他者のために生きようと」


「転生者じゃの」


 ボソリとオリジンが呟いた。


「転生者?」


 首を傾げるクロウ。


「曰く、じゃが。希に現われるのよ。前世の記憶を持ってこの世界に生まれ落ちる人間という奴原が」


「小生がソレと?」


「実際に過去記憶を持っているのじゃろう?」


「それは……そうですね」


 輪廻転生。


 ……とは少し違うが少なくとも重なる部分もある。


 ここが修羅道でも地獄道でもないのなら人間道のどこか別の国と捉えて不思議は無い。


「そしてその過去で不幸にあった」


「全ては小生に於ける傲慢のツケです」


「自責の観念もそこまで行けば国宝級じゃな」


 オリジンは苦笑する。


 クロウの人生観を推し量れる程度には長生きしている鬼である。


「人生万事業有りき」


 とは当人の主張の一つだが、クロウのソレは中々の妙であった。


「とりあえずこれからどうするつもりじゃ?」


「死にます」


 サクリと言ってのける。


「この山を血で濡らすなと仰るなら小生は別の地で果てます。如何でしょうか?」


「きさんという男は……」


 もはや言葉も無い。


 そう言わんばかりに呆れるオリジン。


 額の角を指で弄りながら、


「袖擦り合った多生の縁じゃ。ここできさんを見捨てればわしの心象に不利益が被るとは先述したはずじゃが?」


「むぅ」


 クロウが唸る。


 他者の御心のままに。


 そう願い……裏切った父や追い詰めた妹のために自滅の道を選んで尚ソレを阻む御心が現われる。


 にっちもさっちも行かなかった。


「…………」


 嘆息したのはオリジン。


 クロウの心境は手に取っている。


 その程度は容易くやれる。


 鬼であるが故に。


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