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ダンジョンには夢がある弐07


 クロウたちがダンジョンを進んでいくと、背後から多数のパーティがついてきた。


「ええと」


 思念で困惑を伝える。


「まぁ無視しましょう」


 適切なアイナの言葉。


「ドロップアイテムは横取り出来ませんから」


 そうも言う。


「カボチャの集団と思えば何ともありませんよ」


「カボチャですか」


 納得したような出来ないような。


 複雑な愛憎模様だが、


「大丈夫……。邪魔なら消すから……」


 愛妹がわりかし物騒な提案をする。


 念話で。


 クロウたちは三人パーティだが、ゾロゾロと冒険者一行が付いてくるため、


「どうしたものか」


 の有様だ。


 が、既にダンジョン攻略は始まっている。


 人狼が襲いかかってきた。


 ヴェアヴォルフとも呼ばれる。


 リンボでは弱い方のモンスターに分類されるが、


「あくまでリンボが最難関レベルのダンジョンだから」


 であって普通の冒険者には威力的だ。


「なんだかなぁ」


 振り落とされた人狼の握る棍棒を切り裂いて、


「疾」


 呼気一つ。


 人狼の首を断つクロウ。


 その斬撃は神速で、アイナやローズでさえ見切れない。


 ましてクロウパーティのおこぼれに預かろうとする冒険者たちには理解の埒外だろう。


「相も変わらず出鱈目ですね」


 一応外聞を憚ったか、念話で評価するアイナ。


「お兄ちゃん……やっぱり凄い……」


「まだ道半ばですが」


 実際にその通りだ。


 クロウ自身は人間の限界を超えているが、それは大前提だ。


 クロウの師匠……、


「鞍馬の御大に比べれば稚拙も良いところ」


 と彼は言う。


「望みすぎだ」


 がアイナとローズの本心だが、謙遜を否定するのも躊躇われ、論評はしなかった。


 人狼のドロップアイテムは毛皮だったがサラリとスルー。


 結果後ろから付いてきた冒険者が争って奪い合う案件が発生した。


 気にかけることでもなかったが。


 次にトロールが現われた。


 引け腰になる冒険者たち。


「怖いなら逃げればいいですのに」


 とはいえ気持ちは理解せずと認識はするため、とりあえずは口を紡ぐ。


 手にはやはり棍棒。


 膂力は人狼の倍程度。


 クロウとしては力む範囲でも無い。


 刀は抜いている。


 薄緑は容易くトロールの棍棒を切り裂いた。


 元が魔術の品だ。


 その切れ味は極上である。


「…………」


 パンと音がなった。


 何をしたか。


 コレを理解したのは当人のみ。


 トロールの首を切り裂いたのだ。


「刀の振りが音速を超えて空気の壁にぶつかった音」


 そんなものは想像の埒外だろう。


 クロウにしてみれば然程でもないが。


 ダンジョンの二層はゾロゾロとヒルが付いてきた。


 おこぼれに預かる。


 ソに適切なクロウたちではある。


「…………」


 再び現われたトロールはローズの斬撃魔術で首を刎ねられ死亡した。


 ドロップアイテムは無視。


「やりますねローズ」


「えへへ……」


 照れ笑い。


 とても愛らしい妹御であった。


 三階に下りると全員が脱落。


「ま、そうなるよね」


 とはクロウ。


「気楽に行きましょう」


 アイナも言葉が軽くなる。


「あう……」


 ちょっと怯えるローズ。


「可愛い可愛い」


 クロウは愛情で恐怖を吹っ飛ばした。


「それではサクサク行きましょう」


 そう云うことに相成った。


 実際に鬼ヶ山のモンスターに比べれば些末というか粗末というか。


 オリジンの名代として鬼ヶ山を管理していた身ではAクラスのダンジョンでもいささか物足りない。


「ふ」


 呼気一つ。


 襲ってくる狼を切り滅ぼす。


「何だかなぁ」


 とは言うものの、斬る対象がいるのは有り難いことでもある。


 モンスターを切る限りにおいては辻斬りとならないのも大きい。


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