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ダンジョンには夢がある弐01


「それにしても」


 とはアイナ。


「ローズの飛躍ぶりには感心させられますね」


「あう……」


 照れるローズ。


 クロウ。


 アイナ。


 ローズ。


 この三人は学院最強の戦力だ。


 アイナ研究室の研究棟に暮らしており、今は温泉の浴場に入っているところ。


 クロウは思春期以前の少年で、まだ性的に発達していない。


 それはアイナも同じで、エルフという難老長寿故に実力と外見年齢が比例していない。


 一人ローズだけが思春期を迎えていたが、あまり自慢できるボディでも無かった。


 ローズにとってクロウは、


「大好きなお兄ちゃん」


 であって、敬愛や親愛どころか恋愛すら持っている。


 血が繋がっているため禁断の関係だが、そもそもクロウには想い人がいるためローズは眼中に無かったりして。


 ローズもそうだがクロウもまた人間を止めている。


 ローズを、


「デミエルフ」


 と称するなら、クロウは、


「デミオーガ」


 と呼ぶべきだろう。


 セントラル国家共有都市領域の南。


 サウス王国との国境線にある鬼ヶ山は、山の主。


 クロウが操を誓っているオーガことオリジン。


 死に際にオーガのソレを輸血されデミオーガとなったクロウだ。


 実妹のローズより若いのはこれが原因。


 難老長寿であるため、山籠もりで数年過ごしている間に外見年齢だけは、妹のローズに追い抜かれ、未だ自分は少年のままという体たらく。


 責められるべきことでもないが、まぁ食指は動かない。


 未熟な少年であるため性欲とは縁が無かった。


 閑話休題。


「ローズは……少しは追いついていますか……?」


「ていうか場合によっては小生より強いのでは?」


 レーザーを見せられた後では温泉とは別に汗をかく。


「よかった」


 ホッとするローズ。


「いいのかなぁ」


 クロウとしては悩ましいところだ。


 自分がそうであるため、デミエルフになった妹を責められないが、


「何もそこまでしなくとも」


 とは思う。


 とはいえお兄ちゃんっ子であるローズがクロウとアイナの超戦力に追いつくための必要事項とは認めている。


 実際にダンジョンで後れを取ったのだから、能力の底上げも必須だろう。


 兄二人が死に、一人が勘当。


 結果として残ったのがローズだが、ヴィスコンティの当主の引き継ぎはしていない。


「お兄ちゃんと一緒が良い」


 ただそれだけのために強くなったローズであるから。


「ふい」


 頭にタオルを乗っけて温泉を楽しむクロウ。


「本当にコレで良いんでしょうか?」


「何がでしょう?」


「先生を想うと……」


「ムラムラしますか?」


「まだそんな肉体年齢ではございませんので」


「でもキスはしましたよね」


「それはまぁ」


「ポッ……」


 ローズには先生……オリジンを男と伝えている。


 乙女らしく腐った思考は持ち合わせているらしい。


「何故照れる」


 とは言うが、


「そもそも源平時代に腐女子という概念は存在しない」


 ため理解のしようもなかった。


 転生者。


 クロウはそう呼ばれる。


 悲運の武将。


 判官贔屓の語源となった源判官義経みなもとのほうがんよしつね


 それがクロウの前世だ。


 鬼一法眼から虎の巻を授かり、平家を滅ぼした一大武将。


 当人にはトラウマだが、前世の記憶と鬼の血のおかげで、虎の巻は十全に機能した。


 こちらの傭兵や冒険者は体を鍛える事を旨とする。


 対するクロウは剣の術理を体に刻みつける。


 その実力はセントラルのギルドマスターすら影を踏めない領域だ。


 クロウと戦ったギルドマスター。


 今生きているのは偶然の結果だ。


 場合によっては胴から頭部が切り離されていてもおかしくはなかった。


 結果として名を上げたクロウだったが当人は、


「不本意」


 の一言。


 ギルドから勅令が出され、


「クロウに干渉および交渉する権利はギルドマスターを倒した人間のみ」


 と流布された。


 ギルドマスターの言葉が効いて、ちょっかいが出されなくなったクロウであるため、アイナ研究室のお茶くみ係として何時もはせっせとお茶を淹れている。


 メイド服も完備だ。


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