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プロローグ


「では訓練を始めましょう」


 場所はセントラル魔術学院の訓練場。


 案山子が四つ。


 空は晴れており、太陽はうだるような暑さだ。


 場にいるのは三人。




 一人は黒い長髪をポニーテールにしている男の娘。


 狩衣を着ており、腰に刀を差している。


 クロウ。


 そう呼ばれる少年だ。




 一人は金髪に碧眼の白人種……というと誤解を生む。


 長く尖った耳が特徴的な亜人で、エルフと呼ばれている。


 学院で教授をしており、ローブを纏っている。


 アイナ。


 そう呼ばれる少女だ。




 一人は紅の髪を持った女の子。


 学院の生徒で簡素な私服。


 美貌麗しく、否定の要素が見当たらない。


 魔術貴族ヴィスコンティの直系で魔術の天才。


 ローズ。


 そう呼ばれる少女だ。


 ちなみに見た目一桁のクロウ……その妹だが、外見年齢はローズが上である。




 アイナの研究室に所属する唯一の生徒で、魔術については常識より一歩先を行っているが、


「あくまで人間としては」


 ではあった。


 今までは。


「では炎を」


 アイナが指示を出す。


「…………」


 無言で微動だにせず魔術の起動。


 結果として案山子を燃やし尽くす。


 灼熱の炎だ。


 思考から発動までのタイムラグがあまりに狭い。


 業火が熱を呼び瞳に映ると案山子は消えていた。


「では風を」


 アイナの指示。


「…………」


 無詠唱無儀式。


 突風が局所的に発生し、案山子を吹き飛ばす。


 颶風。


 そう呼んでいい威力だろう。


 やはり思考からノータイム。


「風の斬撃は出来ますか?」


「はい……」


 頷くと同時に案山子が切り裂かれた。


 細く長い面積に超常的な気圧がかかって疑似斬撃として発生する。


 一刀両断にされる案山子。


 が、それでも手加減した方だ。


 威力によっては鉄さえ切り裂けるレベルにいる。


 ローズは。


「あとは……」


 しばし考えるアイナだった。


 エルフ。


 教授。


 研究室の支配者。


 研究生であるローズを導く魔術師ではあるが、ローズが優秀すぎて何をどうとも言えない。


「では一番強力な魔術を」


 結果としてそうなる。


 無残に残骸となった案山子三つ。


 残る一つにスッとローズは手を差しだした。


 赤光が奔る。


 光と熱だけの波動魔術。


 レーザーだ。


 発動は一瞬。


 結果も刹那。


 最速にして理に適う。


 認識できようはずもない現象だ。


 この世界最速の光を生みだして攻撃に転化するというのだから。


 レーザー砲は地平線の彼方まで物事を燃やし尽くして消失した。


「…………」


「…………」


 ちょっと何と言っていいか分からない。


 それがクロウとアイナの感想だ。


「大体……血が馴染んで……きてますね……」


 たどたどしくローズは言った。


 一時的に死に瀕した際に思ったのだ。


 人間を止めてでも強くなりたい……と。


 そのために攻撃魔術に没頭し、それを真摯に受け止めたアイナによって強化された。


 正確にはエルフであるアイナの血をローズに与えたのだ。


 実は御法度だ。


 バレれば弾劾裁判にかけられる。


 が、元より目覚ましい実力を有していたローズであったから、魔術の能力が繰り上がっても誰も疑問は持たなかった。


 既に人ではなく、デミエルフと呼ばれる存在だが、傲慢に奔る事もせず結構周囲にビクビクしているのは小動物らしくてクロウの苦笑を呼んだ。


 エルフの血を得て魔術能力が強化され、その手腕はクロウとアイナにも見劣りしない逸れ物となってしまうローズだった。


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