金なる明星より降りし者04
「ギルドマスターなら話は早いですね」
膂力溢れる壮年の傭兵にクロウは臆せず話しかける。
「訓令を出しては貰えませんか?」
「何と?」
「クロウ如きに関わるな……と」
「自身を如きというか」
「偏に未熟者です故」
クロウは肩をすくめる。
これについては謙遜ではない。
「条件があるが飲んでくれるだろうか?」
「如何様にも」
クロウは云った。
「内容にもよりますが」
余計な一言も。
「カカッ」
とギルドマスターは笑った。
「痛快だ」
そう笑顔が云っていた。
「それで条件とは?」
「俺と決闘しろ」
「…………」
半眼で睨むクロウ。
「なんだ? 駄目か?」
「勝負の意義が何処にあります?」
尤もな言葉だった。
「リンボのモンスターマーチを剣一本で殲滅した腕前。拝見したく存じるな」
またそれですか。
そう言いたいクロウではあった。
自身が如何に異常なことをしたか自認していないというのもクロウらしい。
嘆息。
「それでマスターの気が済むのなら」
「然りだな。では日程を決めよう」
「それで牽制してくれるのですよね?」
「約束は守るさ」
さほど信じられる重みのない言葉だったが頷く他ないクロウだった。
「マスターとクロウの一騎打ち!」
「マジか!」
「やべぇ!」
「どっちに賭けよう!」
「真っ先に席の手配をだな……」
「こりゃ見逃せねぇ!」
「情報が伝達するより先にチケット買わねえと!」
うんぬんかんぬん。
「ギルドマスターは注目されていますね」
クロウが云うと、
「お前様に言われてもな」
マスターは苦笑で返した。
「何処のコロシアムで――」
「倍率は予想で――」
「いやさすがにマスターが――」
「とはいえクロウは――」
わいわいがやがや。
衆人環視は、
「興奮冷めやらぬ」
と云った感じだ。
「これはこれで面倒なことになった」
そう痛感するクロウ。
とはいえ模擬戦で安寧が買えるなら安い代償でもある。
基本的に戦いに名誉を持ち込まないのがクロウの信念だが、この際必要経費なのだろう。
「ていうか……そうとでも思わないと」
というのが本音でもあるが。




