金なる明星より降りし者03
アイナ研究室に直接的な依頼がギルドから舞い込んできていた。
所謂一つのクエスト。
最難関のダンジョンすら歯牙にかけないアイナ研究室。
その威力を見込んでの依頼発注だ。
「面倒くさいです」
「便利屋じゃないのですけど」
「お兄ちゃんが嫌なら……ローズも嫌……」
とはいえこれらはクロウに起因する。
有名税と云えるだろう。
「しょうがない」
とはクロウ。
メイド服のままギルドを尋ねると、
「――おおっ!」
と、その愛らしさに傭兵たちが見惚れる。
気にするクロウでもないが。
メイド服の腰に愛刀を差してカウンターへ。
「これはクロウ様!」
姿勢を正すギルド員。
「然程の者でもないのですけど……」
とはいえあくまでクロウの自己評価に過ぎない。
「ギルドに登録する気に?」
「いえ」
簡潔な否定。
そこに躊躇いは無い。
「刺激しているこちらが言うのも何ですけど……」
何故ここまでしなければならないのか?
そうも思うが放っておいても大事になる。
「ギルド所属の傭兵たちを押さえつけてください。正味な所、迷惑です」
「そうは云いますが……」
ギルド員としては別の感想もあるらしい。
「最大級の礼節で迎える準備がありますけども」
「謹んでごめんなさい」
やはりクロウの返答は芸が無かった。
「喧嘩を売っているのなら喜んで買いますけど……その場合そちらで葬儀の類はやるのでしょうね? それともあなたが第一号となりますか?」
「勘弁願います!」
ギルド員は顔を真っ青にした。
「あう……あうう……!」
しどろもどろのギルド員。
そこに、
「どうした?」
と偉丈夫が声を掛けてきた。
カウンターを挟んでクロウの反対側だ。
要するにギルド員だが身に纏った武威は裂帛の一言である。
「マスター……」
ギルド員がそう呼ぶ。
マスター。
ギルドマスターの略称だ。
要するにギルドのセントラル支部におけるトップとも言える。
「クロウ様がお見えに……」
そんな言葉。
ギルドマスターはクロウを見やる。
「ほう。そちが」
納得とも困惑とも言える口調。
クロウは外見年齢が一桁だ。
ギルドマスターとて疑いもするだろう。
「何用だ?」
「下品な勧誘への掣肘を」
「大きく出たな」
面白いと笑うギルドマスター。
「しかし貴殿の能力を証明されている。であれば責任が発生するはずだが?」
「小生の剣は大切な人に捧げる物。欲望と利益の換算には値しません」
「中々に悟っているじゃないか」
「皮肉ですけどね」
クロウにしてみれば転生前の記憶が引っかかるのだ。
転生者のカルマと言えないこともない。




