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金なる明星より降りし者02


「クロウ!」


 クロウとアイナとローズ。


 三人でサウス王国の料理を提供する食堂で食事をしていると、そんな快活な宣言が高らかと放たれた。


 だいたい用事は想像が付く。


「何でしょう?」


「決闘しろ!」


「却下します」


 蕎麦を手繰ってズビビとすする。


 鰹だしが蕎麦の香りとともに口内で踊る。


「逃げる気か!」


「はい。逃げさせて貰います」


 特に躊躇の欠片も無い。


「では俺の勝ちで良いな」


「はい。おめでとうございます」


 ぬけぬけと言ってクロウは蕎麦を手繰った。


 万事そんな感じ。


 市場を回って無聊を慰めていると、


「覚悟!」


 と唐突にクロウは傭兵に襲われた。


 唐竹割り。


 スラリと躱す。


 超感覚による結界を張っていたためクロウにとって不意打ちは不意打ちにならない。


 渾身の一撃は空を切り、代わりのクロウの手刀が襲撃者の喉に突き刺さる。


 呼吸困難。


「馬鹿な真似は止めてください」


 すっ惚けるように云うクロウだった。


 そもそもにして不意を突いて勝利することが名誉だと思っている襲撃者の感性こそ度しがたい。


 偏頭痛とは違うが似たような痛みはどうしようもなく覚えてしまう。


 ところで此度の傭兵は高名だったらしい。


「あの万象斬殺を……」


 と市場の人間が驚愕して囁き合っていた。


「何事か」


 とはクロウの念話。


 感応石のイヤリング。


 アイナとローズは、


「まぁ」


「ねぇ」


 と異口同義に呆れ果てた。


 知らないクロウの方が異常なのだ。


 とはいえ山で過ごしたクロウにしてみれば冒険者ギルドの勢力図など念頭になくて当然でもあるが。


「万象斬殺。セントラルのギルドでも最良の一角ですよ」


「その剣を素手でいなした……お兄ちゃんが凄い……」


「またやってしまいましたか……」


 クロウとしては嘆息するより他に無い。


 そんな気分になっていると、


「おいクロウ!」


 別の人間が穏当とは程遠い声質でクロウを呼んだ。


「?」


 とクロウ。


 見れば赤い髪と瞳の少年二人がクロウに声を掛けていた。


「兄様方」


 ヴィスコンティの長男と次男だ。


「お前が騎士だったとはな」


 長男……アーロンが皮肉るように云った。


「然程でもありませんが」


 謙遜……というより事態を悪化させないための低姿勢。


「ちょうどいい」


「何がでしょう?」


「俺たちは後日リンボに潜るんだ。お前も付き合え」


「謹んで申し訳ありません」


 コンマ単位の謝辞即答だった。


「お前は俺の弟だろうが」


「ですね」


 事実ではある。


「であれば兄を立てろ」


「謹んで申し訳ありません」


「調子に乗ってるか?」


「滅相も」


 ハンズアップするクロウ。


「兄様がお前如きを使ってやろうというのだ! 有り難く思うべき所だろう! 尊崇して云うことを聞くのが弟ではないのか!」


 次男のブレットが理屈にも為っていない論理を展開する。


「クロウ様?」


 アイナのこめかみが引きつっていた。


 無理もない。


「クロウの敵が自身の敵」


 そんなアイナである。


「何でしょう?」


 クロウもだいたいはわかっているが確認くらいは取る。


「殺していいですか?」


「痛い目に遭わせる程度なら許可します」


「ではその通りに」


 そう云ってアイナが手を差し伸べた瞬間、


「「…………ひっ!」」


 二人は恐怖に駆られて逃げ出した。


「さもありなん……ですか」


 概ねクロウの近況だ。


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