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ダンジョンには夢がある06


 とりあえずボスモンスターも倒したため、クロウたちは三十一階層に降りた。


 下一桁が一の階層は休憩エリアだ。


 その通りの場所だった。


 流水があり、どうやって光合成をしているのか果実のなる樹。


 ついでドロップアイテムの金銭取引や物々交換。


 ところによっては治癒系の魔術師による有料の回復産業まで見受けられる。


「色々と便利なんですね」


 一応十一階層と二十一階層でも似たような光景は見ているため感慨も湧かないのだが。


「すみません」


 とアイナが商人に交渉していた。


 二十階層レベルで取れたドロップアイテムを換金する手筈だ。


 基本的にクロウたちの受けたクエストは、


「感応石の持ち帰り」


 であるため、それ以外のドロップアイテムは荷物にするより換金した方が面倒が無いということ。


 こと金銭に興味の無いクロウとしては、


「細かいことはアイナに任せましょう」


 と相成った。


「お兄ちゃん……強いね……」


「そうですか? 照れますね」


 頬を人差し指で掻く。


「お兄ちゃんの天翔……どんな意味があるのかなって思ったけど……剣の術理という意味では……破格の魔術だよ……」


「元々天狗の剣ですし」


「てんぐ?」


「なんでもありません」


 説明できるはずもなかった。


「ともあれ空を翔る魔術の本質を理解して貰えれば幸いかと」


「うん……。お兄ちゃん……無敵……」


「さすがにそこまでは」


 鞍馬の御大じゃあるまいし。


 そんなクロウの感想だった。


 基本的に、


「自分は未熟」


 そんな観念がクロウを縛る。


 能力としては人外の域だが、それはクロウにとって大前提でしかない。


 人外の域にいたってやっと一歩目だ。


 そこから更に踏み込んだ領域に師事していた御大が居るのだから天狗になれないクロウではある。


「でもお兄ちゃん……強いよ……?」


「ありがとう」


 自分より背の高い妹の頭を撫でるクロウ。


「ふにゃ~」


 と表情を弛緩させるローズだった。


 妹と友誼を図っているところに、


「クロウ様」


 とアイナが戻ってくる。


「交渉は終わられたので?」


「ええ」


「儲かりましたか?」


「それはもう」


 こちらの世界の金銭事情には疎いがアイナが嘘をつく理由も無いため、儲かったというなら儲かったのだろう。


「アリアレス卿ならば……色も付くでしょうし……」


 そんなことをポツリと零すローズだった。


「?」


 とクロウ。


「何でもありません……」


 はぐらかされる。


「三十階層レベルに行きますか?」


 クロウは言った。


 特に疲労も感じない。


 むしろアドレナリンは激しく肉体を刺激していた。


 当然、鬼の血の影響だ。


「今日はここに泊まりましょう」


 アイナが提案する。


 ノンストップで三十一階層まで攻略せしめたのだ。


 時間的にもクロウはともあれアイナとローズは休憩が必要だった。


「ではそうしましょう」


 特に異議も無い。


 休憩エリアで寝床を探していると、


「もしかしてアリアレス卿ですか?」


 傭兵の一人が尋ねてきた。


 金髪碧眼のエルフ。


 かつ外見年齢は幼女のソレ。


 当然そんな範疇に収まり、なお最難関のダンジョンにいる輩はそう居ない。


「何か用でしょうか?」


 つっけんどん。


「よろしければ共闘しませんか?」


 そんな提案。


「遠慮します」


 けんもほろろ。


「しかしそちらのお二方では頼りなくありませんか?」


 ローズは貧弱。


 クロウに至っては幼子だ。


 刀を差しているが、どう見ても戦力に数えられる外見ではない。


 傭兵が、


「アイナの魔術一つでダンジョンを攻略した」


 と勘違いするのも必然である。


 クロウはホケーッと反論もしない。


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