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ダンジョンには夢がある05


「ははははは……」


 もはや笑うしかない。


 アイナの心境はソレだった。


 ダンジョンを進んで三十階層。


 ボスフロアに待ち構えていたのはボーンドラゴン。


 最上級モンスターことドラゴンを骨だけにしたような外見のソレ。


 骨だけであるのに感覚その他知覚機能は有益に働いており、クロウを狙って、何処にそんな機関があるのかドラゴンブレスまで吐く始末。


「…………」


 クロウは放たれたドラゴンブレスを天翔で躱す。


 間取りの広いフロアであったため空間的に戦え、それはつまり京八流の真骨頂だ。


 地に足を付けるのではなく天を翔ることで相手を翻弄するのが天狗の剣たる京八流なのだから。


 当然ブレスはクロウを追いかけるが、


「あまりに遅い」


 が正味な感想である。


 アイナとローズの二人は防御障壁を張ってドラゴンブレスの余波を防いでいるがそれだけ。


 基本的なオフェンスはボーンドラゴンに対して……というよりダンジョンに潜ってからコレまでクロウに一任していた。


 クロウとしても遠慮無く剣を振れる環境は喜ばしかったため、むしろ率先してモンスターを屠っていた。


「お兄ちゃん……」


 さしものローズも呆れ気味。


 バトルジャンキーに見える兄が痛ましいらしい。


 クロウとしては戦いではなく剣術に有意義を見出しているのだが、端から見れば戦闘狂に見えないこともない。


 さもあらんが。


「――――!」


 ボーンドラゴンが吠える。


 飛膜のない骨だけの翼がかぎ爪のようにクロウを襲う。


 クロウは水分を蹴ってこれを躱す。


 次の瞬間、一対二枚の翼の一かけが切り裂かれていた。


「――――!」


 全身骨造りの何処に痛覚が働いているのかはようとして知れないが、ボーンドラゴンは苦鳴に吠えた。


「うわぁ」


「です……」


 無論後衛二人にはクロウの斬撃は見えていない。


 あまりに疾すぎて振り切ったことすら認知し得ない。


 とはいえクロウとしても困惑していないわけではない。


 骨だけで出来たモンスターである。


 何処を狙えば死ぬのか皆目見当が付かず、なおクロウには剣を振るうしか能が無い。


 足やら尻尾やらが襲ってきたので切り裂いたが、悲鳴こそ上げるものの、あまり痛痒というわけでもないらしい。


「援護しましょうか?」


 とはアイナの念話。


「何とかしてみます」


 丁寧にクロウは返した。


「頭部でしょうか?」


 そんなことを思ってドラゴンブレスを躱しながらボーンドラゴンの頭部に接敵する。


 放たれたのは銀の閃光。


 揺らめくクロウの残像と首を断ちきられたボーンドラゴン。


「――――」


 世の不条理を嘆くかのような苦鳴を上げて、ボーンドラゴンは土に還った。


 頭部が弱点だったらしい。


「骨だけなら幾らでもやり様はあるでしょうに」


 とはクロウの感想だが、そこまで便利に作られればそれはそれで身も蓋もない。


「うーわー」


 と呆気にとられるアイナ。


「さすがです……お兄ちゃん……」


 ローズの方は嬉しがっていた。


「ふむ」


 チンと刀を鞘に収める。


 地面に埋めるように消えたボーンドラゴンの遺体に変わりドロップアイテムが現われる。


 竜骨。


 要するにドラゴンの骨だ。


 ボーンドラゴンらしい置き土産ではあった。


 採取するアイナ。


「役に立つのでしょうか?」


 クロウとしては疑念だが、


「武器の生成における材料になります。粉末にすれば呪術儀式の材料にもなりますし」


 とのこと。


 基本的にこれがセントラル国家共有都市領域の産業だ。


 国際化領域であり、神王皇帝四ヶ国にダンジョンのドロップアイテムを輸出する。


 そのために傭兵や冒険者がダンジョンに潜ってドロップアイテムを採取する。


 乱立するセントラルのダンジョンだからこそ出来る市場の流動性とでも言うのか。


 要するにそゆ事。


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