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ダンジョンには夢がある03


 そんなこんなで三人パーティでリンボに潜るアイナ研究室。


 クロウは狩衣の腰に薄緑を帯びている。


 一階層は基本的に休憩フロアだ。


 ダンジョンに潜る者。


 逃げだしてきた者。


 負傷した者に治癒する者。


 そんな冒険者の風景がクロウの目を楽しませた。


「なるほど」


 と。


 とはいえ興味対象で言えばクロウたちも中々だ。


 幼女二人に美少女一人。


「何事か」


 と他パーティが思った最たる念だろう。


 それから内一人がアイナ教授であり、もう一人がアイナ研究室の所属した時の人ローズと囁かれ、納得の空気が蔓延する。


 残る黒髪ポニーテールことクロウについてはさすがに情報不足だが。


「アリアレス卿」


 傭兵だろう一人が声を掛けた。


 ギルドの時と同じ。


 営業だ。


「前衛は要りませんか?」


「要りません」


「しかし最上級難易度のダンジョンは時に魔術行使不可エリアがありますぜ? アリアレス卿の実力を疑いはしませんがさすがに魔術だけでどうにかなるダンジョンでも……」


「必要ありませんと言いました」


「死ぬつもりですかい?」


「ええ」


 爽やかにアイナ。


「そうなんですか?」


 クロウが念話で問う。


「単純な駆け引きです」


 アイナはどうやらクロウの前衛役に対して信服を寄せているらしい。


「小生然程でもありませんが?」


「まぁダンジョンに潜ったら分かりますよ」


「駄目でしたら……休憩フロアに戻れば良いですし……」


 ローズも思念でフォローする。


 そんなわけで傭兵の営業をけんもほろろにしてクロウたちはダンジョンを下る。


 前衛がクロウ。


 後衛がアイナとローズだ。


 最難関と呼ばれる幽界の名を冠したダンジョン。


 その威力は、


「然程でもないですね」


 特にクロウの苦にはならなかった。


 まだ上層部と云う事もあるが、出てくるダンジョンのモンスターは鬼ヶ山で現われるモンスターより弱いという結果でもあった。


 オリジンに山の差配を手渡され、秩序を保つために奔り回った数年。


 鬼ヶ山のモンスターに比べ、ダンジョンのモンスターはクロウがどうにでも出来る程度だ。


「ふ……っ」


 剣が閃く。


 その度に血が噴き出しモンスターが血沼に沈む。


「キシャア!」


「ギシャア!」


 地獄の底から吠えているような不吉の警戒音を発するモンスター。


 が、それはクロウの剣を止める事能わず。


 切り裂かれて命を終える。


 ドロップアイテムはアイナが回収していた。


 大きなリュックサックを背負っており、いかにも鈍重そうに見えるが、魔術の恩恵で何事も無く。


 足取りも違和感なく軽い。


 如何な魔術を使ったのかはクロウの計り知るところではないが、別段聞く必要性も覚えてはいない。


「それにしても……」


 とはローズ。


「お兄ちゃんはどうして……」


 鬼の血を受けている影響も否定は出来ないが、それにしても強すぎる。


 もっともクロウにしてみれば、


「御大の影を踏む程度」


 と謙遜するほかないのだが。


 そもそも剣の扱いソレ自体が傭兵の通念とはかけ離れているのだ。


 剣を振る際に筋力を込める。


 であれば一端剣を振りきれば動作が停止する。


 そこに魔術の援護を与えるのが後衛の役目だ。


 しかしクロウの剣は止まらない。


 切り下ろされた刀にモンスターが唐竹割りになると、その刀がクンと機動を瞬時に修正して次なる敵に斬りかかる。


 また止まらず第三の敵を、第四の敵を、滑るように切り滅ぼしていく。


「魔術でも使っているのでしょうか……?」


「多分違うとは思うけど気持ちは分かります」


 ローズとアイナは念話でそんな感想を漏らした。


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