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争えないのは血か業か10


 後日。


「……っ! ……っ!」


 特にやる事も無いのでクロウは愛刀を振っていた。


 型稽古だ。


 その横では、


「むぅ……」


「むむ……」


 アイナとローズが感応石を相手に奮起している。


 念話……テレパシーを可能とするマジックアイテムの生成だ。


 ローズが作っているのはクロウとローズで念話を行なえるソレ。


 アイナは自身とローズを繋ぐソレ。


 アイナの方の感応石はクロウが買った物である。


「小生を仲介しても面倒ですし」


 クロウはそう言った。


 三者三様にチャットが出来るというわけだ。


 音速すら超えるクロウの剣速ではあるが、型稽古に於いては不要でもある。


 刀の振り方の確認と最適化。


 それらが稽古に於ける最大の恩恵だ。


「人間の体について最速へと構成を作り替える」


 そう言っても間違いではない。


 剣の究極は人によって違う。


 その上で自身の全てを捧げるに足る術理を見出すのが剣術という物だ。


 クロウにしてみれば他に在り方が無いだけなのだが……ソレについては割愛。


「……っ! ……っ!」


 剣を振る。


 丁寧に。


 仮想敵を思い起こし。


「剣を捧げる先生のために」


 それが第一義であろう。


 次いで、


「他者のために」


 それも第二義と言える。


 功に逸らず。


 誉れに目も向けず。


 ただただ「人が良い」だけの機能を持つ。


 そしてそれがクロウにとっての贖いなのだ。


 誰に許されるわけでもない。


 誰に認められるわけでもない。


 そんなことは先刻承知している。


 だが正義の味方とはその様な者であり、クロウにとっての理想型でもあった。


 他者を不快にさせないための実力行使。


 矛盾しているがそれこそクロウの目指す物でもあるのだ。


「……っ! ……っ!」


 剣を振る。


 丁寧に。


 かつ静粛に。


 筋肉の動き。


 神経の反射。


 血流操作に意識への刷り込み。


 なお高度なバイオフィードバック。


 これにおいてメイド服で無ければ様になっていただろうが。


「出来ましたー!」


 とアイナが歓喜の声を上げる。


「あう……」


 とローズも肩の力を抜いた。


 儀式が完了した証拠だ。


 耳飾りの体裁を取り繕った携帯電話。


 クロウとアイナとローズは両耳にそれぞれのイヤリングを付けて性能を試す。


「テステス……」


 ローズから思念が聞こえてきた。


「聞こえますか……お兄ちゃん……?」


「聞こえますよ」


 クロウも言う。


 念話で。


「えへへぇ……」


 頬を朱に染めローズははにかんだ。


「クロウ様?」


 とはアイナ。


「浮気しちゃ駄目ですよ?」


「しないのですけど」


 オリジンに操を誓っている以上、他の人間に体を許すつもりはクロウには毛頭無い。


 ソレについてはアイナも知っているはずだが、掣肘も駆け引きの一つという事だろう。


「……っ!」


 型稽古に戻るクロウ。


「…………っ」


「…………!」


 アイナとローズは何やら念話で確執的になっているらしい。


「……っ!」


 クロウとしてはどうでもいい事だが。


「お兄ちゃん……?」


 と口頭でローズ。


「何でしょう」


 ひたすら剣を振るう。


「さっきから何してるの……?」


「型稽古」


「かたげいこ……?」


「要するに剣術を修めているって言えば良いでしょうか?」


「でも……」


 むぅと不思議がるローズ。


「ここは魔術学院……」


「ですね」


 否定はしないし出来ない。


 セントラル魔術学院は魔術を研鑽するところであって、剣術の研鑽は騎士学院の領域だ。


「けれど」


 とはクロウ。


「小生にとっての戦闘手法は剣ですので」


 魔術すらもその延長。


 アイナは理解しているがローズの方は、


「むぅ……」


 と勘案するに足りた。


「とはいえ未熟者ですけど」


 クロウは苦笑する。


 さもあろう。


 剣劇の極致には程遠い。


「だからお兄ちゃんは……」


 天翔。


 薄緑。


 その通りの魔術行使。


 ローズの納得も必然だ。


 偏に、


「剣を極める」


 何度も言うがただそれだけ。


 そんなレゾンデートル。


 であるためクロウはクロウであるのだから。


「お兄ちゃんは……不器用だね……」


「真理を突きますね」


 念話で苦笑するクロウだった。


 何事も万事そんな感じ。


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