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争えないのは血か業か03


 学院ではアイナ研究室が生徒を取ったと激震していた。


 結果ローズは時の人となる。


 あまり社交的ではなく、クロウくらいにしか心を許していないためオドオドビクビクと人間関係を畏れること大であった。


「そういうところが愛らしいですね」


 とはクロウの言だが、これには一種のプラス修正が掛かってもいる。


「どうすればアイナ研究室に所属出来るのか?」


 そんな質問も今更だ。


「ええと……わかりません……」


 がローズの本音だ。


 実際に知らない。


「無詠唱魔術の体得が条件」


 とはアイナの言だが、それを聞いているのはクロウくらいだ。


 学院長も予想はしても当人の口からは聞いていない。


 研究室配属の時機と重なったため、門前市を為す数の入室希望者が殺到する。


「面倒くさいですね」


 とはアイナの言だが、教授であれば生徒の見極めも大事な仕事と言える。


 そんなわけで一人一人生徒の品定めをするアイナ。


「御苦労様」


 と念話で労うクロウである。


「あの……お兄ちゃん……」


 研究室でのこと。


 アイナは入室希望者を査定しているため此処には居ない。


 念話でクロウに愚痴ってはいるが。


「どうかしましたか?」


 なるたけ紳士にクロウは応答した。


「そのイヤリング……感応石ですか……?」


「ご名答です」


「アイナ教授と……?」


「以下同文」


「むぅ……」


「何か?」


「ズルいです……」


「とは言われましても」


 クロウとしては苦笑いくらいしか出来ない。


「ローズも……お兄ちゃんと……念話したいです……」


「でしたら感応石を買いに行きましょうか?」


「いいの……?」


「その程度に気兼ねはいりませんね」


 サックリ言ってのける。


 そんなわけでこんなわけ。


 クロウとローズは感応石を求めて市場に繰り出した。


「もう面倒です~……」


 念話でアイナが愚痴ってくる。


「我慢なさってください」


 こう云うときは一般論しか口に出来ない。


「ところで金銭の都合はついていますか?」


 クロウは市場を歩きながらローズに問う。


「感応石を買うくらいなら……まぁ……」


 一応貴族の出ではあるのでそれなりに貰えはするだろう。


 なおアイナ研究室の研究費も肩代わりできるし、魔術学院の生徒ともなれば交渉で有利にもなる。


「お兄ちゃんは……不思議な格好……」


 クロウはメイド服姿ではない。


 狩衣だ。


 ついでに髪はポニーテール。


 愛刀薄緑は腰に差していないが、特に必要も無いだろう。


「似合っていませんか?」


「ううん……。格好良い……」


 赤面しながらローズは褒めた。


 心底からそう思っていることが覚れる表情である。


「可愛いですねローズは」


「えへへ……」


 幸せそうにご満悦なローズ。


 外見年齢はクロウが年下なのだが、それでも甘えるに不足無いらしい。


「ところで感応石での念話における加工はローズも出来るのですか?」


「それなりに……」


 ローズがそれなりというなら出来ることの証明だ。


「器用なんですね」


「えへへ……」


 褒められて嬉しい。


 そんな素直な女の子だった。


「お兄ちゃんは……なんで家を出たの……?」


「あまり逢い引きで話す内容でもありませんね」


「むー……」


 唸るローズ。


「仕方ない」


 そう思って口にする。


「偏に父の期待を裏切ったからです」


「お父さんを……?」


「理屈は分かるでしょう?」


「ん……」


 頷くローズだった。




『天翔』




 水分を足場に空間を跳躍する魔術。


 当然、無詠唱。


 こと一般的な魔術師が持つ魔術は一人につき一つ。


 エルフなどの亜人ならば話は違うが、凡才の魔術師ならばソレが通念だ。


 クロウは前世の業故に。


 ローズは天賦の才故に。


 それぞれ複数の魔術を修めているが、むしろそっちが例外だ。


「実際に……」


 とはローズ。


「兄たちは一つの魔術しか使えませんし」


 その通りだった。


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