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争えないのは血か業か02


「ブラコンみたいですね」


 念話でアイナが苦笑する。


「色々と小生に心を仮託するクセがあったもので」


 念話で苦笑するクロウだった。


「それで」


 と問う。


「まさか小生とローズを引き合わせるために研究室に招いたわけでもないのでしょう?」


「本当にまさかですね」


 アイナも苦笑。


 ローズはクロウを抱きしめてグシュグシュ泣いている。


「結局アイナの研究室所属の条件って何でしょう?」


「儀式不要の魔術行使です」


「えーと?」


 思念で首を傾げる。


「要するに呪文の詠唱や魔法陣の記述をしなくともノーアクションで魔術を行使できる魔術師。それが私の求めていた人材です」


「なるほど」


 クロウが嘆息する。


 無論テレパシーで。


『クロウ様なら研究室に歓迎します』


 その意味が分かったのだから。


 クロウの魔術はあくまで剣術の延長線上ではあるが、それでもノーアクションで魔術を執り行える。


 ローズ同様に呪文の詠唱も事前の準備も必要ない。


 たしかにアイナが求める人材ではあった。


「結構無茶な選考基準ですね」


 魔術師は呪文を唱える者。


 そんな固定観念が魔術師に共通してある。


 ソに対するアンチテーゼ。


 クロウの場合は御大の指導の賜物だが、ローズが独自にその域に辿り着いたとなれば並大抵の才能ではない。


 そうであるが故にアイナが目をつけたのだから。


 閑話休題。


「お兄ちゃん……」


 ローズは時間と共に泣き止んで、心を整理しているらしかった。


 その指標にクロウの言葉を必要とするのも必然。


「お兄ちゃんは……今まで学院に居たんですか……?」


「在籍はしておりません。小生はアイナ教授の使用人であります故」


「家を出てからこちらへ……?」


「あー……」


 あまり話す意欲も無い。


 とはいえ話さないわけにもいかないだろう。


「山で暮らしていました」


 その通りなのだからしょうがない。


「そういうローズは? 学院には長いんですか?」


「一年前です……。兄たちはもっと早く入学されていますけど……」


 クロウを『お兄ちゃん』と呼び、他を『兄』と呼ぶ。


 それだけでアイナはローズの心境の大体を知れた。


「お兄ちゃんは……」


 むぐ、と言葉を探す。


「どうして成長していないのですか……?」


 それも至極尤もな疑念だ。


「どう思いますか?」


「信用には値するでしょう」


 クロウとアイナは念話でやりとり。


「あーっと……」


 しばし躊躇った後、


「これはあまり吹聴されると困るのですけど」


「黙秘します……」


「重畳です。鬼の血が流れているんです」


「オーガ……」


「ええ」


 難老長寿。


 数年ぶりに会った兄が記憶と合致している。


 その理由だ。


「たしかに知られれば……面倒に相成りますね……」


「なので秘密と言うことで」


「分かりました……」


 頷くローズ。


 クロウには従順なローズである。


 そんなわけで新しい生徒がアイナ研究室に加わるのだった。


「何だかなぁ」


 とはクロウの思念。


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