金なる明星より降りし者参06
「てめ!」
「やろ!」
「調子!」
「ふざけ!」
くあ、とクロウの欠伸。
兵士たちの不満爆発。
対処に少し労力を割いた。ありていに言えば、「少し撫でてやった」程度のものだが、職業軍人相手に年齢一桁がソレを為したのだ。
「化け物か!?」
との論評も、決して大げさではあらじ――――どころかオーガ……鬼人としての異能を含めれば一種の化生ではあろう。
尤も、一番働いたのはムサシだが。
魔術による鎧袖一触。
クロウは鬼丸で。
イズミは魔術で。
それぞれ難を逃れている。
そのムサシはといえば、
「ふむ」
空間魔術のかかったリュックサックを背負っている。
完全にバックアップ専門の想定をしているらしく、二天一流の剣は形而上の物となる。
肉体の芯に剣の術理が存在しない。
魔術師として身を振るようだ。
しかし腰にはちゃっかり和刀を差している。
イズミの(というと正確ではないが)召喚魔術で異世界から取り寄せた物だ。
長曽根虎徹マークⅡ。
その影打。
錬鉄。
技術。
斬性。
耐性。
全て高水準。
「さすがに本物はレベルが高いでしょう」
と少しムサシははしゃいでいた。
「ありがとうざいます。拙も大切にするでしょう」
とも。
「で、まだ潜ってないのにコレですか」
倒れ伏した兵士らを眺めやって、
「ふ」
クロウの吐息。
彼にしてみれば何時もの苦労性の発露ではあるも……下山からコッチ、トラブルに愛されているのは否定能わじ。
爆裂。
爆裂。
また爆裂。
吹っ飛ばされる兵士たち。
対魔術装備の兵士たちも居はしたが、
「疾」
「射」
クロウとイズミの剣の前に沈んだ。
一応、殺してはいないが。
爆発の魔術も、衝撃と爆音で、打撃と鼓膜破り程度だ。
「何ゆえ第一階層で戦いが?」
「それは俺も知りたい」
「拙もでしょう」
三人揃って、首を傾げていた。
まず安全地帯にしてキャンプ場でもある第一階層で、派手なドンパチをやらかしている因果関係が等価で結ばれない……その点に想いを馳せるも、答える者がいるはずも無し。
言ってしまえば発端はイズミの剣撃だが、正当性はある。
そこから連鎖的に兵士が襲ってきており、
「後はなし崩しか」
そう相成る。
「ふーむ」
中々情緒ある展開だった。
様式美。
いつも通り……とも言う。
「これだけでも共和国の軍隊削りましたよね」
「そらな」
「会談は無事でしょうか?」
「別に奪い合いに発展するならソレも良いんじゃねえの?」
「イズミは傭兵ですからご自身のことも……」
「心配してくれるのか?」
「駄目ですか?」
「結婚してくれ」
「心に決めた人がいますので」
「ソイツを斬れ……と?」
「……………………」
カチャと鬼丸が鳴いた。
「ジョークだ」
「笑えませんよ」
「仲が宜しゅうございましょう」
ムサシがそんな二人をクスクス笑ってみていた。
爆発。
爆撃。
爆音。
爆轟。
パズルゲームの連鎖反応のように、物事を解決していく。
「南無阿弥陀仏」
チーン。
「で」
あらかた無力化したのは先述通り。
「ムサシはソレで良いのか?」
「むしろ拙が魔術でフォローしないと、全員前衛ですし」
「……だな」
一分の否定余地もなかった。
「じゃ、行きますか」
「クラスは?」
「入れば分かる」
「そうでしょうけども」
クロウは思案。
イズミは強気。
ムサシは温和。
それぞれが、それぞれに、
「ダンジョンの何たるか」
に思うところもあるらしい。




