金なる明星より降りし者参05
「そもダンジョンとは何者為るや?」
という話も出る。
「考えたこともない」
とイズミとムサシ。
「ふむ」
新しいダンジョン。
そを前にしてクロウは考える。
――ダンジョン。
名前はまだない。
クラスも設定されていない。
「ダンジョン……ですか……」
少し考えた。
下一桁が一の階層が休憩フロア。
下一桁が零の階層がボスフロア。
後は探索の迷宮。
地下へ地下へと潜っていく。
洞窟……とはまた違う。
階下に行くように階段はある。
休憩フロアでは、地上に帰るための魔法陣も設置してあるし、サービス精神の旺盛さは、まるで、「頑張ってください」と激励されるような。
「遺跡でしょうか?」
先人文明。
すこし耳にしたことがある。
「どこで聞いたんでしたっけ?」
ソレは素で忘れていた。
「何かしら人を試すような……」
とは思うが、
「では誰が?」
「何のために?」
そう問われれば沈黙しかない。
南無三。
「これはこれは」
ダンジョン。
その第一階層。
そもそも前提として、「未だ共和国軍の管理下にある」わけだ。
兵士たちが屯していた。
当然と言えば当然の成り行き。
「「「「「――――――――」」」」」
兵士たちがどよめいた。
クロウ。
イズミ。
そしてムサシ。
三人が三人ともに、年齢一桁の幼年。
イズミとムサシは幼女。
クロウは男児だが、見た目は女の子。
曰く男の娘。
それは鼻の下も伸びる。
「ムサシ殿。出陣ですか」
「でしょう」
サクリと頷く。
「そちらの女児は?」
「皇国の傭兵でしょう」
「敵ですな」
「でしょう」
「じゃあ捕虜にしちまいましょう。嬲り甲斐がありそうだ」
下卑た性欲が悪臭と共に放たれる。
「…………」
「…………」
クロウは素知らぬ顔。
イズミは笑顔だったが、眼が笑っていない。
「お嬢ちゃ~ん?」
完全に舐められてた。
致し方あるまいが。
「先人が残した遺産とするなら、その意図は那辺に……」
クロウはダンジョンのレゾンデートルについて考えている。
別に状況を認識していないわけでは無いが、
「触れられるより先に斬れる」
と思っているので相手にしていないのだ。
「自分が男だ」
ということも此処に加味される。
「軍律を以て粛正するよ~」
ヒュン。
風鳴り。
飛燕のように刃が奔った。
チンと納刀するイズミ。
初動の見えない明鏡止水の剣。
クロウをして、「一種の極み」と評せられる剣だ。
抜いて。
振って。
納めて。
何事もなく、歩みを再開して、やっと斬傷と出血と部位欠損が同時に起こった。
長曽根虎徹。
性欲の根幹を切り捨てていた。
「相も変わらず凄まじい剣ですね」
「それに勝ったお前が言うか」
「あくまで天翔有りきですから」
「ソレを言ったら俺もアンチマジックを使ってる」
「なるほど」
爽やかな会話。
「がああああああああっ!」
悲鳴が……上がった。




