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金なる明星より降りし者参01


「ところで」


 とはイズミ。


 皇国側に戻った砦で歓迎されながら、食事を取る。


 肉々しい食事はクロウの肌には合わない。


 牛骨スープは美味しいようだが。


「戦いの最中は魔術使わなかったよな?」


 ムサシの手合わせの件だ。


「でしょう」


 否やもないらしい。


「俺は関係ないが……」


 アンチマジックの妙がある。


「クロウには混じった方が良かったんじゃないか?」


 クロウの方は、


「天翔」


 という魔術を堂々と使っている。


 天狗の剣だ。


「いえ、不可能でしょう」


「コンセントレーションの問題か?」


「そうでもありましょうぞ」


 コクリと納得するようにムサシが頷く。


「二天一流はそもそも剣術と魔術を極めるために拙が生みだした魔剣でしょう」


「剣術と……魔術……」


 クロウやイズミも似たような対処はしている。


「ただどちらも極めすぎて片手落ちな現状でしょう」


 それは、


「?」


 となる。


 クロウにしろ、イズミにしろ。


「何か?」


「例えば……」


 少し考えるように砦の天井を見上げるムサシ。


「足が速く、泳ぎが上手い人がいるとしましょう」


「はあ」


「では、その人は、走りながら泳ぐことが出来るでしょうか?」


「無理ですね」


「無理だな」


 至極真っ当の結論。


「拙にとって剣術と魔術はソレに値するのでしょう」


「なるほど」


 要するに魔術を使うときは剣を忘れ、剣術を使うときは魔を忘れる。


 呼吸一つで、スイッチは出来るものの、クロウやイズミのレベルが相手では、その一瞬が命取りだ。


 であるため呼吸するように剣術と魔術を並列している二人とは差異が在る。


 とはいえ、状況次第で使い分けられるのは一般的には凄まじい異能だ。


 実際にその片鱗は二人ともに見た。


 高火力で軍隊を吹っ飛ばし、そこから剣術で血路を切り拓く。


 そんな戦力を一人で賄えるのが、ムサシという傭兵の強みでもあって、それならば傭兵ギルドの決戦力にも相成るだろう。


「中々上手くいかない物だな」


「並列されれば小生らに勝ち目はなくなりますし」


 それも事実の一片だろう。


「で、これからの事なんだが」


 イズミの話題転換。


「ダンジョンですか」


「然りだな」


「拙も挑みたいでしょう」


「三人か」


 既に十分すぎる。


 仮説としてSクラスのダンジョンすら踏破するだろう。


「共和国軍の駆逐は?」


「こちらが優勢です」


「そもそも国力では上だしな」


 ダンジョン産業。


 魔金属の輸入は在り、兵士らにもアーティファクトは普及している。


 さすがにオーガにしてサムライのムサシには敵わないが、その要素だけ排除すれば、結果はご覧じろ。


 そう相成った。


「ダンジョンの取り返しは?」


「数日中に」


「政治的決着も勘案すれば少し時間がいるな」


「ええ」


「じゃ、突貫するか」


「拙も異論は無いでしょう」


「小生も構いはしませんが……」


 考える仕草。


「共和国の軍隊は?」


「蹴散らす」


「可能ですけどね」


 卑下もしないクロウだった。


 牛骨スープを飲む。


「しかしダンジョンですか」


 アレからコッチお世話様だ。


「モンスター相手なら名誉もない」


 それも事実ではある。


 ――ただ斬れる相手が其処に居る。


 それだけでクロウには嬉しかった。


 物騒な思考だが、


「剣に取り憑かれた者」


 にはカルマのような意義であり、何より自身の剣の方向性を見極めるために必要な事項であることも……畢竟事実でもある。


「救い難い」


 も、確かに結論ではあれど。


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