表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
180/203

チートなサムライ三度14


 丁々発止。


 丁々発止。


 空間的にクロウは剣を振るう。


 弾かれる。


 既にムサシの方は鍔迫り合いを諦めている。


 膠着した瞬間、蹴撃が襲う。


 その蹴りを切り払おうにも、空中で足場を構築し、次なる剣が襲う。


 単純に、地面に足を付けて振るうムサシの剣は、空間上に無尽蔵に足場を造れるクロウの剣とは、隔たりがあった。


 蹴りや跳ねといった、


「剣に於ける悪手」


 が、クロウには意味を為さない。


 全身が剣であり、得物を選ばない二天一流とは別の意味で、意味不明な剣ではあった。


「喝」


 ムサシの薙ぎ。


 クロウは跳ねて避ける。


 普通なら空中から落下するだけの得物と成り下がるが、


「疾」


 クロウの場合、空中に足を引っかけて、落ちないどころか、勁の練られた剣を振るう。


 発勁。


 剛剣がムサシを襲った。


「マズ……っ!」


 受け止めるムサシ。


 肉体制御の緻密さたるや、既に其方も常識の埒外。


 ミシィと地面が鳴いた。


 ムサシが踏ん張っている両足から、蜘蛛の巣状の地割れが起きた。


 クロウの剛剣を剣で受け、その衝撃を腕から肉体……足へと逃がしたのだ。


 ムサシ自身は無事だが、


「わお」


 その地面のヒビを見れば、クロウの剣の破壊力が窺える。


 イズミも驚くほどだ。


 クロウは更に加速アクセル


 縦に一回転して、上段斬り。


 躱すには足に衝撃が残る。


 受ければおそらく追撃が来る。


 躱すか。


 受けるか。


 あるいは牽制するか。


「喝!」


 剣気を放った。


 がクロウには通じない。


 剣気にあてられるのは御大との修行で慣れていた。


 尋常とは思えない上段がムサシを襲う。


「ち」


 受けるムサシ。


 さらに、


「ふ」


 踵落としが、追撃で送られる。


「……っ!」


 受け止めきれず、剣が欠けた。


 元々和刀では無いのだ。


 錬鉄。


 芯金。


 研刃。


 それらの揃っていない量産の剣。


 金属系のモンスターすら切り伏せるクロウやイズミの剣に、それで対抗できたのは、偏にムサシの剣の術理。


 されどそれにも限度はある。


 此度の回転斬りが、ソレだった。


 カキンと受けた刃から先が切り取られる。


「――――」


 ムサシは死を想起した。


 剣が無ければ剣には対抗できない。


 二天一流なら出来るが、それにも限界はある。


 少なくとも伝説の武将、


「源義経」


 を素手で相手に出来ると自惚れるほど、愚鈍なムサシでもない。


 ――死ぬ。


 言葉にすれば二文字。


 だが確かに、その覚悟はあった。


「ふむ」


 そのクロウの剣はピタリと止まったが。


 寸尺。


「斬らないのでしょうか?」


「必要ないでしょう」


 サラリと言って、クロウは薄緑の維持を解除した。


 トンと地面に降り立つ。


「如何でしたか?」


「伝説は伊達ではあり申さないでしょう」


「恐縮です」


 ヒラリと笑みを作るクロウ。


「けれど、ムサシの得物が日本刀ならまた違っていたのでは?」


「此方の世界にはありませんでしょう」


 言ってしまえば、


「クロウとイズミが例外」


 ではあるのだ。


 和刀の技術は、転生先には存在していない。


「それで」


 クロウが傍観していた兵士たちを見やる。


「やりますか?」


「「「「「…………」」」」」


 威勢の良い言葉は出ないらしい。


 そうだろう。


 オーガのムサシですら勝てない相手だ。


「纏めて掛かっても傷一つ残せるか?」


 そこから演算せねばならない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ