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チートなサムライ三度09


 砦そのものは無事だった。


 まぁそれも当たり前で、駐屯地としては利に適い、なお雨風を凌げるならば、これ以上は無いだろう。


「中々大きいですね」


 軍隊が駐留するので、当たり前と言えばその通りだ。


「――――」


 既に情報も伝わっているらしい。


 兵士らが陣形を組んで、此方を威嚇していた。


 前方に出ているのは弓兵と魔術師。


「なるほど」


「手強いな」


 クロウは鬼丸を抜く。


 イズミは虎徹を腰に差したままだ。


 くびきから解き放たれる。


撃て(ファイエル)!」


 無数……とまでは行かなくとも、多数の矢と魔術が放たれた。


 色とりどりの飛獲物。


 瞬く間に、現象と事象がクロウとイズミの視界を埋め尽くし、「害せよう」と襲いかかるのだった。


「おんみごと」


 鬼丸が魔術を喰らい、矢を切り捨てる。


 イズミの方は魔術そのものに頓着せず、激流の中を、器用に矢だけ躱して本陣に迫っていく。


 対照的な二人ながら、どちらもが究極だ。


「馬鹿な!」


 誰の悲鳴か。


 声の特定は難しい。


 完全な面制圧が、まるで無力。


 誰が罵ったにしろ、敵軍の総意だろう。


 其処に太陽が上がった。


 太陽……と云うには距離が近いが。


 蒼穹に風が吹き抜ける、山の中。


 第二の太陽は灼熱塊となってクロウとイズミを襲う。


 イズミは気にしない。


 クロウが切り捨てた。


 一瞬で霧散する熱塊。


「なるほど見事でしょうな」


 さして大きい声では無かった。


 ただ戦場に於いて、異質な声は、凜と響く。


 クロウやイズミが良い例だ。


 幼年幼女。


 声変わりもまだという年齢で、レコンキスタしているのだから、


「何の不条理だ?」


 は誠に正鵠を射る疑問。


 もちろんクロウにしろイズミにしろ……ジョークで戦乱を拡大する趣味は無く、偏に給料の内であることだ。


 ここで傭兵の仕事について語るには、あまりに物騒で、ついでに非生産的ではあるものの。


 そして、


「御見事」


 の声も同質だった。


 幼い人間の声。


 明るい女子の物だ。


 言ってしまえば幼女。


「鬼」


「オーガ」


 現われた幼女を、二人はそう定義づけた。


 亜人種。


 オーガ。


 金剛の体を持つ、人間に近しい怪物。


 幼女の額から二本……角が生えている。


 犬歯が尖り、口元から露出。


 それだけで特定には事足りる。


「そりゃ敵うはずも無いか」


 一騎当千を地で行く亜人だ。


 その威力は既にクロウとイズミが証明している。


 クロウは先生オリジンから輸血して貰って、オーガの能力を得たデミオーガ。


 イズミは片親がオーガだったため、半人半鬼のハーフオーガだ。


 それだけなら、


「すごいなぁ」


 で終わるところだが、


『前世の業』


 故に、怪物と成った二人である。


「星々の煌めき。地に満ちよ」


 軽やかに呪文を唱えるオーガ。


流星軍行進曲スターライトパレード


 炎が一斉に周囲に浮かんだ。


 一つ一つは人の拳大の火球だ。


 だが、クロウとイズミを取り巻く無数の数は、ちょっと常識から不在している。


 詠唱がそのまま形と為る。


 星空を映すような無数の火球はドーム状に二人を囲み、


「喝」


 まるで指示するかのように、オーガの差し出した手が握られると、


「――――――――」


「――――――――」


 ドーム状の無数の火球は、一斉に二人に襲いかかった。


「ふーむ」


 イズミは虎徹を握ったり離したりしながら、棒立ち。


「疾」


 クロウの方は上空に逃げた。


 ドーム状なので上からも火球は襲ってくるが、位置を移動させたので、振ってくる火球だけを鬼丸で対処。


「凄まじいですね」


 空中に突っ立ったまま、


「お前が言うな」


 と贈りたくなる賛辞を贈る。


「サブライ……でしょうか」


 オーガがポツリと呟いた。


 次の瞬間、


「「――っ!」」


 クロウとイズミに戦慄が奔る。


 オーガの魔術師。


 さっきから部隊の中程に立っていたが、その身体に剣の術理が芽生える。


 いきなりだ。


 さっきまで魔術特化の姿勢だったはずが、一本の芯で纏め上げられた。


「サムライ――」


 ポツリとクロウが呟いた。


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