そんなわけでこんなわけ15
大商人の馬車。
三つほど、豪奢な物が並んでいる。
馬車…………と呼ばれはするが、その威圧感はあまりに壮大で、あまりに富豪的といえば、その贅沢さがわかるだろうか。
そこに二人は合流する。
幼年。
幼女。
クロウとイズミだ。
「本物か?」
は当然の理屈。
大商人の馬車は既述の如く大きかった。
他にも護衛は乗っている。
Aランクが二人。
Bランクが五人。
イズミはSランク。
クロウはまず傭兵じゃない。
胡乱げな目で見られた。
「何か?」
イズミが掣肘する。
「いや……」
と傭兵は目を背けた。
「?」
クロウは……あまりよく分かっていないらしい。
山育ち系男子なので疎い面もある……むしろそっちがクロウの本質ではあれど、改善には程遠い感性ではあろう。
「イズミ様が護衛に加わってくれるなら心強いですな」
商人は頷いた。
宝石商らしい。
高級馬車には宝石が積まれていた。
手を出すのは三流の証。
クロウもイズミも、商売に手を出すほど無粋ではなかった。
そして出発。
馬車がガタンゴトンと揺れる。
荷台に乗っているクロウはホケーッとしていた。
「ええと……」
傭兵はクロウたちを認識しているらしい。
「何か?」
イズミが返す。
クロウは意識夢想。
「本当にSランクか?」
「そう云うよな」
イズミには今更。
クロウは気にもしない。
カチャリと鬼丸が鳴く。
時折、鬼丸は血を求める。
それが、
「あのゴーレムの意思なのか?」
少し考えもするが。
「馬車でいざこざはやめてくださいね」
商人が掣肘した。
御者とは別に、荷台にいる。
宝石を鑑定しているらしい。
傭兵は信頼稼業だ。
であれば雇い主を裏切ることはないが、「それでも」……との懸念はあるのだろう。
「致し方ない」
がイズミの結論だった。
「いいんですか?」
「いいんだよ」
そんな二人。
「その武器は?」
と同乗の傭兵が聞いてくる。
「和刀だ」
「わとう……」
「剣の一種だな」
説明になっていない。
が、
「懇切丁寧に語ることに意義があるのか?」
という問題。
ソワカ。
「なんなら試してみるか」
陰惨な笑みをイズミが浮かべた。
殺気。
剣気。
弩気。
それらが傭兵を叩く。
「わお」
と商人。
それほど規格外だった。
空気だけで圧倒する。
「稽古を付けるくらいなら幾らでも」
その後に、
「腕の三本は覚悟しろよ」
と続いたが。
「…………」
クロウは体に鬼丸を立て掛けてホケーッとしていた。
空は青い。
それは異世界でも変わらない。
人の営みに、違いは無いらしい。
今生きているから、それが言える。
「なんだかなぁ」
ボンヤリ呟いた。
「そっちは」
「俺以上にタチが悪い」
イズミの本音。
クロウは聞いていなかった。




