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そんなわけでこんなわけ09


「結構近いですね」


 街から見える山脈。


 その里で、傭兵ギルドに助けを請う――クエストを発注する程度には、被害が出ているとのこと。


 馬車で運んでもらい、昼には着いた。


 山村は、少し荒れていた。


 住民は青ざめ、家畜は被害に。


「なるほど」


 とイズミ。


 クロウも、似たような心境だ。


「村長を呼んでくれ」


 村人に提案。


 案内された。


 木造建築だ。


「ルナウルフ……でいいんだよな?」


「ええ」


 頷く村長。


「ほ」


 と、クロウは、茶を飲んでいた。


 ハーブティーだ。


 山村で取れるらしい。


 いつもは淹れる側なので、少し楽しい。


 メイド服は置いてきており、狩衣姿がデフォルトになっていた。


「じゃ、後はこっちで」


 イズミが、気負う。


「お願い致します」


「任せろ」


 やはり、


「ほ」


 と、クロウは、吐息をつく。


「昼間はさすがに出てこないか」


「血を辿れば良いのでは?」


「あー、だな」


「山に入ってしまえば、あっちのテリトリーですし」


「それもそうか」


 そんなわけで、襲われた家畜の宿舎……その血痕から辿って山に入る。


「懐かしい感覚です」


 クロウの声は、弾んでいる。


 何かワクワクしているような。


「良い事でもあったのか?」


「山は、足場が多いので」


「あー……」


 京八流は、天狗の剣だ。


「じゃ、お先」


 トン……と、軽やかに、クロウは地を蹴る。


 そのまま、樹々を蹴って、瞬く間に上空へ。


「おい」


「後追いしてください。討ち漏らしも……可能性としては、無視できざるものであります由」


 そしてクロウは、山を駆けた。


 その器用さは、猿に似る。


「懐かしい」


 山風を感じながら、郷愁に浸る。


「――――」


 不吉な声が轟いた。


 ルナウルフだ。


 炯々と光る獣の目。


「懐かしき」


 とは、クロウの物。


 和刀、薄緑を顕現させる。


 腰の鬼丸は、差したままだ。


 トンと、山場の地面に着地する。


 ルナウルフが囲んだ。


 一対十。


「少し多いですね」


 無いとは言わないが、珍しい。


「――――」


 一匹目が襲いかかってくる。


 速い接敵。


 飛び上がり。


 狙いは喉だった。


 スウェーで避ける。


 同時に刃が奔った。


 一匹目が、ザクリと胴体で二分される。


 血は躱す。


 ヒュッ、と風鳴り。


 背後から二匹目。


 スウェーから、頭上の空間に、足を引っかけて反転。


 刀が、奔った。


「――――」


 躱される。


「さすが」


 知性では無い。


 単なる獣の勘が、生存条件を満たしたのだ。


 三匹目。


 切っ先を向けて牽制。


 二匹目が、あぎとを開いて、襲ってくる。


 空間を蹴って、跳躍。


 ただし上から下へ。


 肉塊の潰れる音。


 踵落としが、二匹目のルナウルフ……その頭部を叩いた。


 即死だろう。


「――――」


 何を呻いたか?


 それは、クロウの知るところではなかった。


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