金なる明星より降りし者弐21
間断なく襲いかかるモンスターを、切っては捨て切っては捨て。
「いい加減にしろよ」
とは、イズミの言。
涼しげな表情だが、さすがに波濤のようなモンスターのポップには、物申したいらしい。
基本的にハーフオーガであるため、スタミナは底無しだが、休憩の余地もないとなれば、愚痴も出る。
「…………」
クロウの方は、面白がっていた。
とかく一筋縄では行かない敵モンスター。
そこに、京八流の御業が振るえることに、歓喜していた。
「スイッチ」
魔術の援護が、飛ぶ。
斬撃とレーザー。
前者がアイナ。
後者がローズ。
ザクリ、と間引きされる。
怯んだモンスターの渦中に、クロウは飛び込む。
切る。
斬る。
伐る。
「剣鎧」
剣護法。
剣刀槍戟が、クロウの全身から突出し、周囲のモンスターを、死に追いやる。
唯一無事なのは、メタルゴーレム。
が、その呼吸は、把握している。
スルリ、と手応えを感じさせない、飛燕の剣。
切り裂いて、メタルゴーレムを、無力化する。
「わお」
とはイズミ。
黒い瞳には、深い敬意がこもっていた。
イズミの場合は、あまり人に言えた類でもないのだが。
「それにしても一桁の階層で魔金属の蒐集が可能とは……」
メタルゴーレムのドロップアイテムだ。
オレイカルコス……と呼ばれる金属らしい。
あまり、その手のことに、クロウは詳しくないが。
三階、四階と下りていく。
お茶の時間と相成った。
魔術障壁で、壁を展開。
水出し紅茶を飲む。
透明な斥力の壁を突破できるモンスターはおらず、とりあえず一服。
「それにしても」
とはクロウ。
「モンスターの密度が違いますね」
「無理クラスですから」
一般人では攻略不可能の烙印を押された、Sクラスのダンジョン。
クロウたちも、余裕はあれど、気は抜けない程度には脅威だ。
お茶をしながら、認識することでもないが。
茶菓子のレーズンクッキーを食べて、紅茶を飲み、
「ほ」
と吐息。
しばし屈伸運動をした後、
「では参りますか」
心機一転……というより、気を引き締める、が正しいだろう。
その覚悟も悲壮に終わったが。
「レーザー……カノン……」
マジックトリガー。
光が迸った。
一瞬にして刹那。
雲耀にして超々神速。
光の波動が、ダンジョンを駆け抜け、蹂躙。
モンスターは、熱と消えた。
「…………」
中々に、大概と言えたろう。
不条理の極致。
回避も、防御も、難しい魔術だ。
それは無理クラスでも、例外ではない。
残った敵の討滅に、前衛が奔る。
躍動的なクロウ。
明鏡止水のイズミ。
どちらの剣も美しく、効率的で、何より容赦がなかった。
互いに負けじ、と剣を振るう。
時折、魔術の援護を受けながら。
ピッと剣を振るうイズミ。
モンスターの血が、飛び散った。
「これあるからな」
別に支障は無いが、
「切れ味が鈍る」
も当然。
それにしては、メタルゴーレムを、サクサク切り裂いているが。
「何処が?」
とは、アイナとローズの感想だ。
クロウの方は、理解している。
ツッコミは、野暮だろう。
というより、剣聖に、剣の術理を語ることが、畏れ多い。
見た目幼女だが、その鬼気は目覚ましく、なお洗練されて、静謐に到る。
五階、六階と下りていく。
モンスターのドロップアイテムは、序盤でありながら貴重な物だった。




