表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/203

金なる明星より降りし者弐17


「南無三」


 なんのことか、といえば、ランク試験だ。


「あまり大仰にしないように」


 とは言う物の、


「幼い少女がSランク評価」


 は、セントラルを、激震として伝播させた。


「アイナ研究室は化け物か」


 とは今更な評価だが。


「教授の血を貰ったんじゃねえの」


 とも噂された。


 噂も何も事実だが、黙秘権は、この際、矛だ。


 単純に、才能だけで、ヴィスコンティでも過去最高レベルの地金に、デミエルフとしての昇華も加わって、


「手がつけられない」


 の状況となった。


 ギルドも動き、


「Sランク冒険者として優遇します」


 と言ってきたが、


「遠慮します……」


 とけんもほろろ。


 兄であるクロウは、ほんと~~~~~~うに今更ながら、栄光や名誉を嫌うので、


「単なるバイトのお茶くみ係」


 と自称している。


 セントラルの全容を把握しているわけでもないので、アイナが導き手でもある。


 最難関ダンジョンを、無傷で攻略する度に、噂が突拍子もなくなっていくが、


「あまり気になさらないでください」


 とは当人の談。


「実際に実力は怪しい」


 とは一部の声。


 ギルドマスターとの決闘を見ていない冒険者にしてみれば、義暗にかられるのも、いっそ順当だろう。


 何しろ、喧嘩を振っても応じないのだ。


 ソレ自体が、法度になっていることもあって、


「後衛が強いだけでは?」


 も一部の評価。


 特に、騎士としての矜持が強い人間ほど、その意見を支持する傾向にある。


 閑話休題。


 そんなわけで、ローズのSランク相応は、セントラルで共有されることとなり、悪しなり良しなり、干渉を受けた。


 あるいはギルド的。


 あるいは政治的。


 あるいは学院的。


 アイナ研究室の門前市は、日に日に度合いを増していく。


 アイナの精査する書類も増え、


「はぁ。お茶が美味しいですねぇ」


「だよ……」


 兄妹は、研究室で、お茶を嗜んでいた。


 クロウの男の娘メイド服姿は、紅の美少女ローズに負けないほど愛らしい。


 その研究室で、仕事をしているアイナ。


 それから、天翔の魔術を会得しようとしているイズミ。


 外から、研究室の扉をガリガリ引っ掻いている、セントラル魔術学院の生徒一同。


「平和ですね」


 ――何処がだ。


 そうツッコむ輩はいない。


 とはいえ状況は整った。


 クロウ。


 アイナ。


 イズミ。


 加えてローズ。


 全員が公式あるいは非公式に、Sランクの実力者だ。


 クロウとイズミが前衛。


 アイナとローズが後衛。


 バランスの取れた戦力であるため、Sクラスのダンジョンに挑戦するつもりだった。


 当然Sクラスのダンジョンともなれば、


「人間には攻略不可能」


 とも言われているため、クエストは存在しない。


 無理クラス。


 そんな別称を持つダンジョンだ。


 攻略要素が、


「そもそも人間の臨界点を超えている」


 と言われている。


 月の光が届かないのに、どういうわけか、ルナウルフやルナベアーが出る、とも言われ、


「ははぁ」


 と、興味深げなクロウだった。


 茶を一口。


 一応、数少ないとは言え、Sランクの冒険者も存在しないわけではない。


 少ないながら、ギルドの保有するダンジョンの情報は、手に入れているため、色々と思惑の余地はあった。


「なぁ。本当にどうやるんだ?」


 これはイズミ。


『宙を蹴る』というのが、イメージとして固まらないらしい。


 こればっかりは、伝えるのが難しい。


 Sクラスのダンジョンの資料を読みながら、


「日々修行」


 と切って捨てる。


 クロウの場合は、まず鞍馬山の樹々を蹴って、縦横無尽に駆け巡るところから始めたわけだが、異世界のセントラルには、樹林の類は少ない。


 全く無いわけではないが、少し遠いのだ。


 あるいは義経……転生したクロウが、鬼ヶ山で、そうしたように、其処を使えば良いのかも知れないが、今はまずSクラスのダンジョンへの挑戦が第一義。


 とはいえ、アイナの仕事に一区切り付いてから、と相成るが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ