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セントラル国家共有都市領域02


 数年ぶりに下山するクロウ。


 セントラルに行くため北を目指して歩き、途中で馬車に乗せて貰った。


 馬車の運賃はオリジンが貯めていたものだ。


 とはいっても山で暮らすオリジンが金銭を稼げるわけも無く、鬼ヶ山で不幸な目に遭った商人の置き忘れを拾ってねぐらに貯めていたもの。


 アイナを助けたときにもクロウはしっかりと全滅した商人と馬車の荷物や金銭は徴収していた。


 死人に口なしである。


 そしてセントラルに着く。


 とは言ってもまだ端っこの方だが。


「じゃあまずは身なりを整えなければいけませんね」


 アイナはそう言った。


 碧眼をウィンクしてクロウを引っ張る。


「人がいっぱいですね……」


 クロウのすっ惚けた言葉に、


「中心に行くともっと多いですよ」


 おざなりに答えるアイナであった。


 そして衣服の店でクロウを飾る。


 ローテーション用に何着か買って、ひとまずは狩衣に似た衣服を好んだクロウがソレを着る。


 次はアクセサリー屋だった。


 リボンやゴムを幾つか買う。


「なんですか?」


 と尋ねるクロウの髪を梳いて、アイナはポニーテールを作った。


「ポニーテール?」


 とクロウ。


 今まで伸ばしっぱなしだったブラックロングが馬の尾のように後頭部で揺れる。


 地の美貌と相まって美少女にも見える。


「後は……感応石が要るけどコレは中央でいっか」


 クロウとアイナ(というかクロウが一方的に)は身だしなみを整えると、簡素な食事処に入った。


 二人揃って食事をし、山暮らしの長かったクロウは食事の多彩さに驚いたりもした。


 クスッとアイナが笑う。


「本当に山生まれなのね」


「生まれはちゃんとした家だったのですが……」


 別段心残りも無い……というかオリジンとの山暮らしが居心地良かったため思うところがない、が正しかろう。


 唐突に、


「よう。相席いいかい?」


 男が一人、そんな風に尋ねてきた。


「…………」


 アイナは店内を見渡した。


 特に客でいっぱいというわけでもない。


「空いてる席がありますが?」


「何。べっぴんさんとお近づきになりたくてな」


「恐縮です」


 アイナとしては皮肉だったが、男は謙遜と取った。


 男は中々に鍛えられていた。


 革の鎧と腰に差した片手剣。


 傭兵。


 あるいは冒険者。


 そう呼ばれる身の上をクロウは知らなくともアイナは覚っている。


「これでもおれぁここら辺では少し活躍していてな。金に困ってない」


 何の自慢か?


 クロウは元より金銭事情について疎いため説明の意図を読み取れない。


 転生者としての記憶では真っ当に金銭で渡りを付けていたはずだが、それでも執着するほどでは当然ない。


「エルフの姉ちゃんは幾らで抱かれてくれる?」


 要するに女を買いたい魂胆らしかった。


 クロウとしても前世では珍しい商売ではない。


 あまり勧められる類の仕事ではないが、飯食うために手段を選ばないなら手頃な仕事と言えるだろう。


 無論のことオリジンに操を誓っているクロウには関係の無い話だが。


「私はクロウ様に惚れていますので幾ら詰まれても体を許したりはしませんよ」


「クロウ?」


「…………」


 無言で指差すアイナ。


 特に感じ入る事も無くクロウは黙々と食事を取った。


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