金なる明星より降りし者弐09
そんなわけで、ローズのランク試験が、申請された。
学院内でのこと。
人目があるとローズが萎縮するので、関係者には箝口令が敷かれる。
「まぁ余裕だろ」
とは、余裕そうな、イズミの感想。
「あう……」
とローズ。
「良い湯ですねぇ」
クロウは、温泉に浸っていた。
というか何時ものメンバーが。
「しかし無理クラスのダンジョンか。確かになぁ」
感慨深げらしい。
イズミも、一人では攻略できない魔窟だ。
「ま、そんなわけで」
とアイナ。
「ローズにはSランク相当の実力を証明してもらいます」
「あう……」
畏れ多いのだろう。
「大丈夫ですよ」
クロウが、紅の髪を撫でる。
「ローズは十二分に強いですから」
「そ……なの……?」
「少なくとも小生では敵いません」
「敵う……よ……?」
「無理です」
「俺は敵うぜ?」
「でしょうね」
アンチマジック。
その使い手だ。
破滅性で言えば、クロウの数歩先を行く。
「もしかして」
とは、アイナの心中。
「私が一番弱いのでしょうか?」
然程でもないが、相性的には、一つの真理でもある。
無論のこと、ダンジョン攻略と、一対一とを、比べられる物でもないが。
「にゃあごう」
鳴いてしまう。
「何か?」
「何でもありませんよ」
クロウの問いを、軽やかに躱す。
「結局ローズも難老長寿なんですよね?」
少し不可思議に問う。
自分がそうであるのに。
「命の水を飲んだしなぁ」
ぼんやりとイズミ。
「あれって貴重じゃ」
「だからローズに使ったんだろ?」
「ですね」
そこは肯定できる。
「あう……」
とローズ。
「お兄ちゃん……?」
「何か?」
「駄目だった……?」
「いえいえ」
クシャクシャ。
頭を撫でる。
「むしろローズをほっぽって生き続けないだけマシになったと云う物です」
「えへへ……」
はにかむローズは、
「可愛い!」
クロウをして、そう言わしめた。
ギュッと抱きつく。
「あぁ……うぅ……」
真っ赤になるローズ。
「むぅ」
「だな」
他二人の幼女が、ジト目だった。
「クロウ様?」
「クロウ?」
「何じゃらほい?」
「私を抱きしめて良いんですよ?」
「いけない事しようぜ?」
「無理にすることも無いでしょう」
サクリと。
「だいたい」
と、ボソッ、と、クロウがイズミに耳打ち。
「あなたは前世では男だったのでは?」
「だな」
「いいのですか?」
「前世の業は引っ張るが、ソレとは別に女子としても育てられたからな」
「あなたがいいのなら小生も構いませんが……」
「抱くか?」
「精通もまだですよ」
「だったな」
あっはっはー。
イズミは、そう笑った。




