金なる明星より降りし者弐05
「――――」
「――――」
クロウとイズミ。
二人は、無言で、やり取りをしていた。
イメージだ。
互角を演じる。
「埒があかない」
何時もの調子に、イズミが焦った。
剣を抜いて、実際に、クロウへと襲いかかる。
速度は、超高速。
その速さは、
「人外」
の一言に尽きる。
観客に見えたのは、残像と結果だけ。
剣の身を叩いていなし、手刀を差し出すクロウである。
「――――」
その無刀を、恐れて引くイズミ。
何故か。
たかだか手刀でありながら、致命的な何かを孕んでいる気がしたのだ。
ゾクリと嫌な汗をかく。
「見切りますか」
クロウが、手刀を握り拳に、変えていた。
「素手」
ではない、
「無刀」
である。
身是剣如。
トントンと、クロウは、小さくジャンプを繰り返す。
呼吸とタイミングを、合わせているのだ。
イズミにも、似たような処方はある。
「…………」
テンポが、少し速くなった。
――来るっ!
そう思う暇もない。
対処した後の、イズミの思念だ。
剣を弾かれ、手刀で襲う。
ソレを、体術でいなされて、間合いが開く。
「ほう」
とクロウ。
「神速……っ」
とイズミ。
「伊達に剣聖と呼ばれていませんね」
「恐縮だ」
次に襲ったのは、イズミの剣だった。
神速で振るわれる。
バックステップで避ける、クロウ。
「――っ!」
さらに加速。
両者共に。
イズミの剣を、クロウがいなす。
クロウの手刀を、イズミが避ける。
丁々発止。
丁々発止。
「――っ!」
独楽のように回転。
イズミが、斬撃を繰り出す。
「…………」
スッと、その剣閃に、クロウの腕が絡みつく。
合気。
京八流で言うところの、
「対剣剣術」
そう呼ばれる。
イズミの片手剣が、直上に放られる。
「――――」
ワッと歓声を上げる客。
「ひゅ!」
「ふっ!」
素手同士の争い。
しかして互角。
体の、練り捌きは、イズミも劣っていなかった。
『無形の位』に辿り着いた剣聖。
であれば、
「心身の効率化」
は類を見ない。
クロウの手刀。
拳で逸らす。
対してイズミの蹴り。
勁を練って、受け止める。
丁度良く、直上の剣が落ちてきた。
つかみ取るイズミ。
剣が、神速で振るわれる。
パパパン! と、空気が、悲鳴を挙げた。
超音速の剣撃だ。
「ですか」
さらに加速。
いなしてみせるクロウ。
「化け物か」
「イズミに言われたくはありませんが」
そんな二人だった。




