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【 ふたりでカウンター! 】  作者: クリスティアーノ・猿川
3/3

アンマッチポンプ

今日は2月ぶりの開店

大人には会えない理由がたくさんある。

カランコロン

バーのドアが開く、髭のマスターは静かに佇んでいる。嫌に長い店内のカウンターには1人しか客は座っていないようだ、不思議な照明はその客の隣に座れと言わんばかりにと席に光を落としている。

「いらっしゃいませ、お客様大変お待たせいたしました。わたくし海外に仕入れに行っておりまして2ヶ月も店を開けてしまいました申し訳ございません。」

「いえ、かまいませんよ。」

俺は自然と光の当たる席に座っていた。


「お客様、何を飲まれますか?」

「じゃあジンバックを1つ。」


マスターは後ろの棚から素早く瓶を取り出し気づいた時には自分の前にはグラスが置いてあった。

一口含みながら隣の席に目をやると座っていたのは知らない四十代ほどの男性だった。

話が違う俺の悩みをこのおっさんが解決できるとは思わない、ホラ話を摑まされたのかもしれないそう思った時おっさんは話しかけてきた。

「なぁ君どこの出身だね。」

よくよく見ると格好もずぼらだし汚らしい髪をしている、俺の嫌いな人種だ。


「出身は秋田だ、もう7年前になるけど上京してきたんだ。」

「そうかそうか。」

なんだこの男は気味が悪い。これは早めに帰った方が良いかもしれない。グラスを空にして一言

「すまないマスター、帰るよ。」

すると間をおかずに

「待ってくれ!!マスター彼にもう一杯、

もう一杯なら払える!」


「かしこまりました。」

なんだこのおっさんは奢られるような覚えはない、金でもせびる気なのかそれとも酔ったところを金でも奪う気なのか。とりあえず酒を作り始めたマスターに悪いので席に座ることにした。

音楽は畳み掛けるような音楽がかかっている。

これはハウスだろう。

「なぁ君、そうだなぁ… 私と乾杯してくれないか

もうこのグラスには口をつけてしまったが、それだけおじさんの最期のわがままだと思って聞いてくれないだろうか。」

なんだこのおっさんは何様だ、知らない若者にベタベタしてだからこういうおっさん達を好きには慣れない。ただ余りにもその目が真剣なので俺は言うことを聞くことにした。

「マスター、彼に何か一杯そんなにキツくないのをあげてくれ。」

「かしこまりました。」

マスターが酒を振る音を聞きながらもう一度隣のおっさんをよく見てみた、もじゃもじゃの髭の中から大きな鼻が覗いている。

「どうぞ。」

マスターが彼に酒を差し出した。

「悪いな、ありがとう。」

「いいんですよ、俺も奢ってもらいましたしね。息子さんでもなくされたんですか?」

チンッとグラスが当たる。

「そうだね、そうだと言われればそうだしそうでないと言われてみればそうだね。ありがとねこれで悔いはないよ。」

彼は立ち上がって僕の前に小さな箱を置いて店を出て行った。俺はぽかんとしていたここにくれば相席した客が悩みを解決してくれるバーだと聞いたから来たのにいたのはただのおっさん。

俺の寂しさはちっとも埋まっていない、綺麗な女でもいるかと思ったがそうでなかったのは正直怪しい店では無いのだと安心したがこれなら女の方がまだましだ。しかももうその客もいない、それともこの箱が何か解決してくれるとでも言うのか。


「お客様どうぞその箱を開けてくださいませ。」

マスターは何か知ったげだ。中にあったのは指輪だった。




え、

「え、これってまさか。」

「はいガンだそうです。もう長くないと

息子に一杯だけでいい酒を奢ってやりたいと仰っておりましたので保険金からつけ払いだそうです。もちろん残りはあなた様にとのことでした。」


涙がゆっくりと落ちるのがわかった、ばかおやじ生きてたんだ。

「今日は俺のおごりだだそうです。」


ずっと1人で生きていたつもりだったがまだ、まだ一人ぼっちになったと決めつけるのは早かったみたいだ。

「マスター、あいつの病室教えてもらってもいいですか?」

「構いませんが。どうなさるおつもりで?」

「そうですね、折角なので父を救ってみようかと。」

「はい、一番救いたい人を救える仕事というのは素晴らしいですね。」

「マスター、会計を一括で。」

「おやお会計はお済みですよお医者様。」


「全く救おうとしている医者がいても、患者が酒を飲むわ病室を抜け出すわではお医者様も大変ですな。 ん?おやおやすいませんお客様にとってはどんな方より救いがいのあるお客様ですね。」

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