ショット
ここは不思議なバー
あなたの悩みを解決するのは
隣の席の誰かです。
優雅さと気品を感じさせる木彫りのカウンター。木彫りの文様はどこの民族文様だろうか、この文様が世に二つと無いことをその文様は伝えてくれている。
イタリア製のシャンデリアが、薄明かりをそのカウンターに落とす。空間を満たす音楽のジャンルはJazz、ピアノのトランペットの音がステップを刻んでいた。
僕が今日ここに来たのは職場の先輩に勧められたからだ。毎日毎日仕事をし家に帰る、そんな毎日を続けていた僕だったが最近憂鬱になっていた。はじめはそんなことは無かったが昨年から始まった新しいプロジェクトにかかりっきりで元々ぼくが進めていたプロジェクトに手をつけさせてもらえなくなった。そこから仕事に伸び悩みを感じ職場に行くのが億劫になって来たのだ。
そんな時だった会社の先輩に
【行くと人が変わったようにスッキリするバー】
と言うものがあると聞き来ることにした次第だ。
電話予約必須で時間まで指定された、よほど忙しいのだろう。席はカウンターのみしか空いていないと言われた。
「ふぅ緊張するな。」
勇気を出して扉を開ける。そこはビルの地下一階、
そのバーは地上の喧騒から逃れるためにわざわざ地下に潜ったような名前をしていた。
【バー土竜】それがこの店の名前だった。
中に入ると、目に入ったのは奥までずらりと続く長いカウンターとその怪しげな雰囲気の店内だった。
席はカウンターしか空いてないのでは無く、
カウンター席しか無かったのだ。しかも時間指定されたにも関わらず店内には他に客が一人だけ、すると奥から白髪の店主らしき男が現れた。
「あの予約した新庄です。」
「こんばんわ、お席はこちらに。」
店主に案内されたのは、長いカウンターにいた客の隣だった。こりゃおかしな店摑まされたかな、客同士で交流しろだの何だのそういった店は少なくない。
しかも隣の客はかなりの美人だ、まさか、、、
店ぐるみのハニートラップか?
「新庄様
こちらの方にどうぞお悩みをご相談下さい。」
ほら来た、先輩もグルなのか。何なんだこの店は、
「いいから、相談してみなさいよ。でもその後は私の悩み聞いてね。」
美人に言われて悪い気はしなかったので、とりあえず相談してみることにした。
「実は元々やってたプロジェクトに手をつけさせてもらえなくなって、仕事へのやりがいが無くなっちゃったんですよね。まぁそんな感じですよ、大した悩みでは無いです!」
見栄をはるように笑ってみせた。しかし女の顔は真剣だ。
「だめよ!あんた気弱いでしょ。」
「え?」
「だから、気が弱いでしょ!?」
まぁ言われてみればそうかもしれない、僕はあまり人と衝突を好むタイプでは無い。
「言いたいことは言わなくちゃだめ
男なら言いたいことは言わなくちゃ!!もう」
なぜか心の中で少しスッキリとした気分になった。
「まあ気が弱いってのは優しいってことだし、
優しいのは良いところだとは思うけどね。」
あぁ僕に足りなかったのはこれだったのか。もう入店当初の疑いは僕の中に残っていなかった。この人は真剣に僕の悩みを聞いてくれている、というかこれは僕がかけて欲しかった言葉だ。
「お二人とも、心の行くまで語り合いください。
ここは人生という旅に疲れた魂の泉。足りないものを補い、明日からの活力とする。その出会いを作ることが出来るそれが私のバーなのです。」
なるほど、確かにこうやってはっきり言ってくれる人周りには居ないや。
「じゃあじゃあ、次わたしの話聞いてくれる?」
「喜んで!!」
悩みは話すだけでは無く
聞いて完結します。
聞き手と話し手相性は100%
あなたも一度如何ですか?
お便りお待ちしています。
あ、そうそう相性が合いすぎて
結婚した人もいたとかいないとか、、、、