集落へ
魔人の子供は必死に走りつづけていた。シャダルは追いかけながら話しかける。
「すまないが名前を聞いてもいいかい?」
「私はニャスっていいます。」
「じゃあニャス、聞きたいんだが何故魔人は人間と戦わないんだ?」
「戦わない訳じゃないんです。王様が討伐されて魔人への王の加護が弱まったせいで魔人達の統率もとれてなくて……」
「代わりの王はいないのか?」
「四天王様達も行方しれずなんです…ですからまわりの種族は今がチャンスとばかりに攻めてくるんです。」
(四天王は行方しれずか……多分街で捕らわれたファールからするに他も散り散りなのかもしれないな……)
魔人王がいることにより魔人の民は王の加護が入る。その加護によりある程度の力は発揮できてたのが王がいないために力が弱まっている。
四天王ファールがあの街で捕まっていたのも力が弱まっていたからなのだろう。
「すみません私もお名前を聞いてもいいですか?」
「ああすまない…シャダルだ。」
すると少し先の森の中から煙があがっているのが見えた。
「あそこかっ。少し様子をみたいから隠れていてくれないか?」
流石に集落の中へは連れていくのにためらいがしょうじた。
何が起きているかもわからない。ニャスにそれを見せるのは酷だと感じたからだ。
「すみません……よろしくお願いします……。」
ニャスは木の影に身を潜める。本当は助けに行きたいのだろうが自分の力では邪魔になると思ったのだろう。
(でも1人では危険だよな……何か召喚を…)
シャダルは召喚するのを考える。実際に召喚するためには召喚契約といわれる異界との契約が必要になる。
ゲーム中でいう力を示せ的な事の後、契約を結ぶことにより可能となる。ただし召喚のジョブを極めていないと契約したとしても呼び出すためのスキルが足らなく召喚することは出来ない。
シャダルはもちろん召喚のジョブも極めていた。
そして頭の中で思い浮かべる。すると空中に無数の魔方陣が現れその中から小さな竜があわられた。
その魔方陣から現れるまでの光景をニャスは見て驚く。それもそのはず召喚したときの魔方陣の複雑な術式。しかも詠唱を唱えず召喚。現れた小さな竜。
「ニャスを災いから守れブラドリウス!」
「クワァ」
シャダルの言った言葉に反応しブラドリウスは返事をするかのごとく鳴いた。そしてニャスの所に飛んでいき肩に止まった。
ニャスの肩に止まった小さな竜を見て驚いたニャスはシャダルに聞く。
「守護竜………?」
「みたいなものだ。1人では危ないからそいつに守ってもらうといい。」
「ありがとう。」
そう言うとシャダルは集落の方へ走り始めた。