森の中で
「魔人の領土に入ったかな?」
ファールを追いかけてきたのだが、まわりは森の中であり何もない。
魔人の領土は人間領土のはるか北にある、東西や各所に他種族の領土も存在している。
魔人=魔物みたいな事はなく魔物は人間の領土だろうが関係なく出現する(ゲームのエンカウントみたいなものである)
「うーん、困ったな…。ゲームの中なら集落があったりイベントが起きたりするんだろうけど…」
まわりは森の中…太陽の光も入らずただ薄暗い中を歩いている。湿度もそこそこあり蒸し暑い。
「ガサガサッ」
木の影から物音がした。
(人か魔人か…はたまた魔物か…)
シャダルは警戒して魔剣を召喚し構える。
「出てこいっ。さもないと攻撃するぞっ」
魔物である可能性もあるがとりあえず言葉を発する。とりあえず言葉が通じるのなら何かしらの動きがあるだろうと思って言った。
すると木の影から子供?が出てきた。
「お願い殺さないで……。」
魔人の子供である。小さな羽が背中から生えており尻尾がある。シャダルはデーモン種の魔人と判断した。
(こんなに震えていきなり殺さないで…っていかに人間に恐怖しているかわかるな……街のことといい…)
「怪我してるのか?」
「………」
よくみると背中に剣できられた様な傷があり血を流していた。
とりあえずシャダルは魔剣をしまい、警戒をとく。
(回復魔法……っと)
頭の中でヒールの魔法を考える。すると魔人の子供のまわりにあわい緑の光が包みこみ傷を癒した。
(考えるだけで魔法使えるって便利だな♪)
「!?」
魔人の子供は何が起きたのかわからずにいた。魔法が自分を包み傷を癒した。目の前の人間は詠唱をしていない。意味がわからなかった。
「傷は癒えただろうし。っととりあえず信じなくてもいいが俺は敵ではない。聞きたいこともあるんだが答えてくれないかな?」
魔人の子供は理解した。詠唱をなしで魔法を唱えたことを。そして傷を癒してくれたことを。
詠唱をなしで魔法を唱えるには極限まで魔法を極める必要がある。すると魔法の紋章が身体の何処かにあらわれる。即ち魔法を極めた証=魔法の紋章なのである。
といっても紋章を持つもの自体が伝説上の存在とされているため見ることなどはほぼ不可能である。
シャダルはその紋章の力をすべて行使できる神の紋章を持っているのだから次元ははなから違う存在にあたる。
「なんで怪我をしてたんだ?何かから逃げているようにも見えたし」
魔人の子供は最初は口を閉ざしていたがシャダルの行動を見て口を開いた。
「集落が襲われて…人間が魔人狩りを……私は母に逃がされてきて…………でも集落のみんなが…」
(やはりか…)
剣の傷は人間の手によるものだろう。魔人狩り、稀少なアイテムに利用されるためか、はたまた奴隷として人間に売るためか…
(ゲームにアイテムに魔人の血が使われているって説明もあったし、普通に奴隷売買ってのもたしかイベントであったよな…ゲームと違ってこの場にいて見ると残酷だよな…)
「嫌だとは思うんだけど集落に連れてってくれないかな?君は必ず守るって約束するから」
魔人の子供は首をぶんぶんふった。
「ついてきて…」
魔人の子供は走り始めた。今逃げてきたのに戻るのは酷だろう。そう感じていた。そして子供の目からは涙が流れていた。悲しいから流していたのか、助けてもらえることに感謝して涙しているのか、シャダルにはわからなかった。が一つだけわかることがあった。
(見た目が違うだけで人間と変わらないじゃないか…)
シャダルは人間の行動に怒りを覚え魔人の子供を追いかけた。
「必ず助けてやるからなっ」