Ⅸ
「さてと、おまたせ。ネオ」
「待ってましたー!」
腹八分になった所で、データベースへの接続を試みる。
先程から思っていたが、ネオがやる気に満ちている。何かあったのだろうか。
「なあ、ニコル。ネオのやつどうしてこんな乗り気なんだ?」
「データベースを見ればネオの事もわかるかもって言ったら、張り切っちゃって」
「自分の事を知りたいからか。でも、名前もわからないんじゃ得られる情報は少ないんじゃないか?」
「あー……」
そこまで考えてなかった、と言わんばかりに目を逸らすニコル。
データベースにアクセス出来たとして、自身のデータが無いから探しようがないと思うのだが。
「いや、チップを使えば……って、わざわざメモリを消すぐらいなのに、チップを残しておくわけ無いよね」
「俺だったら、存在を消したいものは出来るだけ痕跡を消すな」
「だよね……」
「真相が分かったら探してやろう」
ネオの事もなんとかしてやりたいが、まずはこの国の事件についてだ。
何を考えて機械化させたかを判明させないと、ネオを連れてきた意味がなくなってしまう。
全容を知れないとしても、何かの手がかりは掴んでおきたい。
「ネオ。機械達のデータベースにアクセス出来る?」
「どうやればいいのかな?」
「ここの機材をつけて──」
ニコルがネオに動作を教えつつ、データベースへの接続を試みる。
近くの液晶にコードが繋がっている所を見ると、あそこに接続したデータが出るのだろうか。
ニコル達はしれっとやっているが、ネオの接続したものを俺らも見れると思うと物凄いな。
『機械からのアクセスを確認。データベースへようこそ』
「お、できたんじゃないか」
「問題ないみたいだね」
「ここからどうするの?」
「僕が操作するから接続権をこっちに頂戴」
「わかった」
ニコルが液晶に出てきたものを見ながら、手元にある小さな機材を操作し始める。
何をしているのか全然分からないから、一段落つくまで待つことにする。
それから、十分ぐらいが経過しただろうか。
「……オーリ」
「どうした?」
「これみて」
「…………は?」
液晶に出ている文字列に、思わず言葉を失った。
ジャックが”この件は機械達の暴走”と言っていたから。
ニコルが言っていた”入れ替わり”が、反乱行動だと思っていたから。
見間違えたかと思い、もう一度液晶を見る。
しかし、その文字が変わっている事は無かった。
『人間救出プログラム。住民を機械化し、脅威から守る』