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便利屋オーリが世界を救うまで  作者: 匂坂 幾人
機械の国編 -一人ぼっちの少年-
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『機械達のデータベース、か。確かにあるかもしれない。

 僕はデータを引き出す準備をしとくから、オーリは機械を連れてきて』

 ニコルと別れて数十分が経ったが、機械は見つからなかった。

向こうが俺のことを探していると思っていたが、そうではないらしい。

それとも、深夜には行動してないのだろうか。

(住民役も居ないしな)

 街自体は明るいのに、誰も居ないという状態にちょっとした不気味さを感じる。

機械化する前は夜が更けても賑やかだったのだろうか。無我夢中で機械を作っていたのだろうか。

……何を思って、機械を作っていたのだろうか。

(考えても仕方ないか)

 この国はもう死んだ。なら、その後始末をするだけだ。

『君が例の入国者か』

「……誰だ」

『そう警戒しなくていい。君に危害を加えるつもりはない』

 いつの間にか、背後に機械が立っていた。他に見たのとは違い武装はしていない。

街に居たタイプなのだろうか、見た目は人間そのものだ。しかし、こちらのことをしっかり見ている。

街の奴らとはまた別の種類なのか? 

『ふむ、あの女かと思ったが違うようだ』

「あの女? 赤髪で右目に切り傷のある女か?」

『おや、知り合いかい』

「ああ、そいつがこの国に入ったって聞いてな」

 ジャックの情報通り、シノはこの国に来ていた。

しかし、彼女は何故この国へ来たのか。一体何をしたのだろうか。

彼女のことも気になるが、まずはこの国のことだ。

「お前は住民をベースにした機械なのか?」

『そうとも言えるし、違うとも言える』

「どうして俺が見える? 街の機械は人間を認識出来ないんじゃないのか」

『さぁ、どうしてだろうね』

「……お前は、機械なのか?」

『機械と呼ぶには中途半端だがね』

そう語る機械は、あまりにも淡々としている。

機械と呼べず、また人間でもない何か。そして、自分の思考を持っているかのような反応。

こいつは一体なんなんだ? あまりにも異質すぎる。

『そちらの質問は済んだかい? なら、こちらの質問にも答えて欲しい。君は何故この国に関わろうとする?』

「それは、どういう意味だ?」

『人が機械と化した国も、それがどうなろうと君に危害は無いだろう。だと言うのに、どうして君は首を突っ込む?』

「……」

『わざわざ危険に身を晒す必要などないはずだ。それでも君は奔走している。何故だ?』

 確かに機械達、いや、この国の人間からすれば、俺の行動は不可解なんだろうな。

チップを作り、不可視なものを恐れた人達だ。ごく普通の感情すら見落としているのだろう。

ならば、人間の合理的でも効率的でも無い、だけど大事な気持ちを言ってやろうじゃないか。

「それはな、ある願いを叶えるためだ」

『願い?』

「ある少年が、機械の夢を覚ましてくれと望んだ。友達も知り合いも機械化してる

 だろうに、それでも終わらせてと言ったんだ。俺は、その望みを叶えてやりたい

 と思ってる」

『……なるほど。つまり、少年のためということか』

「そうだ。人が他人ひとを助けるなんて当たり前だろ」

『……当たり前、か』

 機械はしばらく腕組みをしていたが、腑に落ちたのかそっと腕をおろした。

『この身体だと理解は出来ないが、君の思考は保存出来た。礼ではないがあれを持ってくといい』

「……機械か? 所々汚れるみたいだが」

『近いうちに処分される予定だった娘だ。君は機械が必要なのだろう?』

「何故それを……」

『さぁ、どうしてだろうね』

 こいつの事を信用していいか分からないが、ニコルに見てもらわなければ罠かすら分からない。

それに、どの道これ以外に手がかりは無いんだ。ならば、素直に受け取った方がいいだろう。

『ニコルを頼むよ』

「お前、名前は?」

『人間の名はもう無いが、そうだな……マキナ、とでも言っておこう』

「……お前は、どうしてニコルの事を知ってるのに放ったんだ」

『さぁ、どうしてだろうね』

 その言葉を最後に、機械は路地裏の闇へと消えていった。

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