Ⅴ
「機械達は誰かの命令を受けてたらしい。それが誰か、だ」
住民にチップが埋め込まれていたなら、機械を操ってる存在にもチップが入ってるはずだ。
それに、ニコルなら何かしろの手がかりを見つけているのではないだろうか。
「それ、機械達が言ったの?」
「ああ。そういう命令を受けている、そう言っていた」
「命令を受けているって……それ、おかしいよ」
「何故?」
「人間は皆死んだんだよ。そんな命令一体誰が出せるのさ」
言われてみればそうだ。そもそも命令出来る人間が消えたのだから、誰が指示をしたのかという話になる。
しかし、機械達が嘘をついたとも思えない。それに、殺した後機械化させたのも不自然だ。
とにかく、機械化させた理由が分からない限り話が進展しなさそうだ。
「人間の機械化ってのは、何か目的があったのか?」
「わからない。人間を機械にしてどうするんだろう」
「そういう計画があったことは?」
「データベースを覗いたけど、そういう話は無かったよ」
「データベース?」
「情報をまとめてる所」
なるほど、そのデータベースって言うのに、チップの情報や研究のデータが入っているわけか。
ニコルが住民の機械化に気付いたのも、データベースを見たからなのだろうか。
「ニコルはデータベースを見て異変に気付いたのか?」
「きっかけだけどね。違和感を感じたから、騒動に気付いたって感じかな」
「違和感?」
「ある日を境に、誰もがその日していた事を繰り返していたんだ」
「なるほどな。それで、チップの情報を見たわけか」
「うん。機械達に元となった人間のが入ってるみたいで、誰が人間とかはわからないけどね」
ニコル以外の生存者が居れば話が進みそうなんだが、そう楽にはいかないらしい。
しかし、機械にチップを埋め込んだのは何故だ。
チップがその人物を知り得る為のものだから、機械には必要ないはずだ。
……もしかして、住民に違和感なく入り込めたのは、チップがあったからなのか?
人間を視認出来なくとも、チップを通じて認識していたんじゃないだろうか。
データベースを基に立ち回ることも、決して不可能ではないはずだ。
だとすると、奴らもデータベースを参照している事になる。
だとすると、どうやって人間と機械の識別をしているか、だ。
機械を人として生活させるなら、誰を機械化させたかのデータがあるはずだ。
ニコルが知らないとなると、データベースには無いだろう。
と言うより、機械達が独自のデータベースを持ってると思った方が自然だ。
そこにアクセスできればいいのだが……。いや、出来るかもしれない。
「なあニコル。機械から情報を引き出せるか?」
「出来るとは思うけど、いきなりどうしたの」
「強硬手段に出ようかなと」
敵を知るには、連れてくればいいってな。