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便利屋オーリが世界を救うまで  作者: 匂坂 幾人
機械の国編 -一人ぼっちの少年-
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「ここまでくれば大丈夫かな」

 そう言って、ニコルが街外れの家に入る。

それに続いて中に入ると、他の家とは違い生活している気配がした。

おそらく、ニコルが使っているのだろう。元々彼の家だったのだろうか。

「それで、チップについてだっけ」

「ああ。一体何なんだ?」

「右手の甲に埋め込まれてるメモリの事だよ。生年月日やら血液型とかの個人情報が入ってる」

「個人情報?」

「例えばの話、名前と生年月日が分かれば、登録されてるデータを元に現在のことがわかるでしょ。その役割を果たすのがチップさ」

「……なるほど。そのチップってやつを使って情報のやり取りをしていたわけか」

 そういうこと。とニコルは言いつつ、水の入ったコップをこちらに渡す。

それを飲むと、非常用のとは違い新鮮な味がした。

「チップがあれば住民と認められ、また、その人物の全てをわかるようにした」

「どうしてそんなことを?」

「機械が身近にあったから、一々データを入力するより遥かに楽だったのさ。

 あとは……恐ろしかったんだろうね」

「恐ろしい?」

「人間という存在がさ。

 機械は嘘をつかない。でも、人間は嘘をつかないとは限らないでしょ。

 チップを通じて、その人の人柄データが見れるということに安堵したんだ」

「怖いな。可視化出来るものが全てって事だろ」

「うん。まるで、首輪をされてる様だったよ」

 首輪、か。確かに、自分の事が全て情報化されてるのは息苦しかっただろう。

誰だって人に見せたくない部分はあるだろうに。この国は、どこかずれていたのかもしれない。

 それにしても、個人情報を扱うチップか……。

チップの情報を使えば、機械を狂わせた人物がわかるかもしれないな。

「なあニコル。機械を妨害してる奴を知らないか?」

「それ、僕だよ」

「……はい?」

「え、とっくに気付いてるものだと思ってたけど」

 言われてみれば、ニコルは機械化していない。

それに、この国に居たなら何か対策を知っていても不思議ではない。

当初の目的は果たしてたってことか。

「オーリが国に入りたそうだったから、助け舟を出したってわけ」

「そういうことだったのか」

「オーリなら、この国を終わらせてくれると思ったからね」

「終わらせる?」

「機械が人間を真似るなんてやっぱり間違ってるよ。機械達の覚めない夢を終わらせないと」

 そう言うニコルは真面目な顔をしている。

まだ幼さが残る少年が、そんな事を言い出すなんて思わなかった。

生き残った彼が、一体どんな思いで機械達を見ていたのだろうか。

それを考えると、これはニコルなりの救済なのかもしれない。

「わかった、終わらせよう。機械達の為にも」

「……ありがとう。オーリ」

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