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俺の友達の話シリーズ

幽霊駅

作者: 尚文産商堂
掲載日:2016/03/31

長らく鉄道を運行していると、廃駅や使われなくなったホームなんてものがでてくることがある。

その中の一つ、私は迷い込んだ。


手野鉄道でも山の中を走っている路線を通っていると、誰もいないはずのところで電車が止まる。

ここ2日ほど暇だということもあって、私はそこに降り立った。

周りは山、そして渓谷があるだけという秘境駅。

GPSで調べると、奈良県と三重県の県境、奈良県よりのようだ。

何もないなりに、私は面白くなって駅の周りを調べてみる。


「うそでしょ……」

道もなければ、ダムや民家の類もない。

本当に何でここに駅があるのか不思議になるほどの秘境駅だ。

ベンチと電燈があるから、完全な暗闇になることはない。

ただ、ひたすら暇なだけだ。


「おや」

ガサガサっと音が鳴り、びっくりしてみると、猟師のような人がやってきた。

「この駅で人に会うとは。初めてのことだ」

「こんばんは」

終電はあと15分ほどで来る。

20時19分着発の電車があるようだ。

「こんばんは」

横、いいかなと猟師が言うと、私はどうぞと言って、わずかにずれる。

「君はどうしてここに?」

「全駅降車の旅の途中なんです」

「ああ、最近流行ってるね」

実は孫がそれをしているんだよ、と漁師は言う。

見た目に反して、けっこう歳がいっているのかもしれない。

「気を付けなさいよ、この辺りは出るっていう噂だから」

「出るって、何がですか」

聞くと怖いが、聞かないといけない気がする。

「幽霊だよ」

ああ、これを持っていなさいと言って猟師にお守りをもらった。

「1回だけだけどね、君の代わりになって護ってくれる」

「はぁ」

半信半疑ではあるが、私はそのお守りをかばんにしまう。

布でくるまれた固い感じのお守りだ。

木のようなものが入っていることは分かる。

「それじゃあ、僕は行かないと」

「あ、お疲れ様です。さようなら」

私は思わず立ち上がって、猟師に言った。

「それでは、また」

会わないとは思うけど、と苦笑いをして猟師は駅から山から下っていった。


そして電車がホームに来る。

汽笛を鳴らして、3両編成がやってきた。

ドアが開き、電車に乗ると、一瞬で乗ってはいけないと直感で分かった。

ここから大きな駅まではしばらくかかる。

席は空いているが、2、3人はいる。

1人はなぜか立っていて外を眺めているようだ。


しばらくして眠っていたようだ。

私は生暖かい吐息で目が覚める。

「喰ってしまおうか」

「まあ待て。寝かせたほうが旨いと聞く」

「しかしだ、随分と寝たぞ」

3人は銘々そんなことを話した。

どうやら熟成させるということで寝るといっているようだ。

私が目を開けると、3人は私を取り囲むようにして立っていた。

「おや、もう目が覚めたか」

「喰うしかなかろう、なかろう」

周りは薄暗い、もはや電車の中が電気がついているかわからないほどだ。

そして、首に手がかけられる。

「がっ、ぐぎっ」

空気を探して肺が膨らむ。

横隔膜は下がるが、そこに入り込んでくるのは虚無だけだ。

「ほう、生きがいい。よい餌だ」

そういいつつ、さらに別の人が私に手をかける。

「……やれやれだ」

その時、全く気付かなかったもう一人の乗客が声を出した。

「悪さしちゃダメだろ。古代の契約によって、お前らを殺さなきゃならない」

そういって、背中に手を回して銃を構える。

ライフルのように見えた、ショットガンかもしれない。

銃には詳しくないからよく分からないが、ただ、それは音もなく弾を出した。

透明な空気の塊が、彼らの体を貫く。

暗いからか銃弾が見えないだけだろう。

ギャッと声を出し、3人は霧散する。

「危なかったか」

「ありがとうございます」

私はようやく呼吸ができるようになって、その人に礼を言った。

そして、月明かりが窓から差し込んできて、その人の顔をようやく眺めれた。

「あっ」

あの猟師だった。

「シー、声に出してはいけない。声には気が入ってしまうからね」

だから、僕のことは思うだけでいいんだ、と彼は言った。

「さあ、眠ってしまいなさい。ゆっくりと目を閉じるんだ。そして、タタン、タタンと揺れ動く。電車の揺れに身を任せ、そしてはっと目を覚ます。そこは君が下りる駅。さあ、はっと目を覚ますんだ」


夢かはたまた何だったのか、私は分からなかった。

やばっと思ったのは、目を覚まし駅標名を見ると、降りる駅だ。

あわててホームへと降りた。

あれが夢かどうかは、ずっと後になってもわからない。

ただ、買った記憶がない割れた木片が、絹の袱紗に包まれてかばんに入っていたのは真実だ。

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