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「出るってどうやってだ?この牢屋からも出れないんだぞ」
私の言葉に男は笑う。
「一ついいか?もし、ここから出られたら少しばかしの金をくれ。どうだ?悪い話じゃないだろ?」
「は?」
「本当は隣の奴からもらう予定だったんだがくたばったからな。待ってたんだよ、金を持ってそうな奴」
「出れる方法があるのか?もしあるなら私も連れて行ってくれ、少しばかしでよければお金も出せる」
「よし、その言葉に嘘はなしだぜ」
そうして扉の前に立つ。
「な、何をする気だ?」
私の言葉に答えるかのように扉を殴り飛ばす。
一発目でほぼ半壊状態になる、続けて殴り鉄製の蝶番が弾けとび扉が音を立てて倒れる。
「よし、行くぞ」
「な」
自分の口が魚のように閉じたり開いたりしてるのが分かるが今、起こったことに思考が追いつかない。
「おい、何してんだ」
男の言葉でようやく落ち着きが少し戻る。
「す、凄まじい力だな」
それしか言いようがなかった。
「ネズミの血で蝶番を錆びさせていたからな、大したことないだろ」
そう男は言うが、それだけではない様な気がしてならない。
そうしてる間に上の階から武器を持った兵士達が降りてくる、物音を不審に思ったのだろう。
すぐさま、全員が私達に気づき武器を構える。
三人の内、前二人の兵士が槍をこちらに向けこの状況に声を出す。
「な、何をしている!?」
「見りゃわかるだろ!!」
大声で叫んだというより、吠えたかと思うと兵士達に向かって走っていく。
兵士の持っている槍など意に返さず凄まじい速度で前二人の兵士の頭を両手で掴み思いっきり地面に叩きつける。
一瞬の出来事のせいか二人の兵士からは声すら出なかった。
三人目が悲鳴をあげ逃げようとするが、男の右手が兵士の首を掴み、持ち上げる。
「聞きたいことがあるんだ、教えてくれよ」
苦しそうに喘ぎながら男の言葉に涙を流しながら何とか頷く。
「ここが、どうなってるか教えてくれ。教えてくれたら殺しはしない。安心しろ、な」
「わ、わがっだ、わがっだから」
兵士の言葉に嬉しそうに笑った。