5.
「今日は大量だな」
嬉しそうに笑いながら言う。
突然のことに驚き固まっている私に笑いかける。
「いつもは中々、成功しないんだがお前さんがきてからツキがきたのかもな」
窓の縁にネズミの臓物を置いていたのは海鳥を捕まえるための餌か、一瞬止まった思考で何とか考えをだす。
先ほどのナイフを鳥の首に当て掻き切る、そして出てきた血をそのまま飲み始める。
その絵面はさながら子供の頃に読んだ怪物を思い浮かばせた。
「お前も呑むか?」
口を拭いながら鳥をこっちに向ける。
「い、いや私はお腹がいっぱいでな……大変に残念だが今回は遠慮しておこう、うん」
なるべく不快感を与えないように言ったつもりだが自信はない。
私の言葉に「そうか」とだけ言って残りを飲み始め、暫くしてから鳥も先程のネズミのように解体されていくの眺める。
「そういえば先ほどから使っているナイフはどうしたんだ?」
「これか?これならベッドに刺さっていた釘を熱して加工しただけだ」
「熱した?火はどうしたんだ?」
至極当然の疑問を尋ねる、火結晶を持っているのかと思ったがそんなものは持ち込むことは許されないだろう。
「まさか、火系統の魔法が使えるのか?」
「魔法?んなもん使える訳ないだろ。起こすんだよ」
そう言って近くにあったベッドの残骸であろう木の板と棒を引っ張り出す。
そして奇妙なことは始めた。
棒の先を板にこすり合わせるように回転させ始めたのだ。
「何をしているんだ?」
「見れば分かるだろ、火をつけてんだよ」
そうは言われても分からない。ただ、何も言えず黙って見ていると棒の先から煙が立ち始める。
「お、おお!」
こっちが驚いているのを尻目に先ほどの解体した鳥の羽とネズミの毛を煙が出ている場所に当てる。
そしてそのまま、火がつくのを確認し部屋の隅に持っていく、そこだけ床が外れ土がむき出しになっており火が燃えうつらないようにわざと板を外しているのがわかった。
「こんなもんだな、ネズミと鳥を焼くか」