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「それを、その大領主とかに届けようとして捕まった訳か。災難だな」
あまり興味がない口調で答える。
「どうにか、脱獄したいのだが……ここではな」
私の言葉に気になることがあったらしく聞いてくる。
「どういうことだ?」
「どういうこと、とは?」
「ここではなって何だよ。そんなにまずいのか?ここは?」
座りながら壁にできた小さな穴を見つめながら、言葉だけを向ける。
「一度収容されたら二度と出れず、脱獄した者は一切いないことで有名だからな」
「そんなに厳重なのか?」
「ここは湖の上の島に作られているからな、行き来するのには舟が必要だ、勿論厳重に管理されているだろうし……泳いで渡れないように湖にはザッハという契約獣が放流されている」
「ザッハ?」
「凶暴で大きい魚らしい、私も姿を見たことはないが。領主お抱えの魔術師がいるんだが、それの契約獣らしい」
そのことから、この湖のことを魚の口という呼ばれ方をするぐらいだ。
「人、一人なら余裕で飲み込まれるらしい」
そう言った瞬間、男の手が動く。
穴から出てきたネズミを一瞬と言っていいほどの早さで捕まえる。
男の手の中で悲痛な鳴き声を上げるネズミを握ったまま笑う。
「喰いごたえがありそうだな、いい加減ネズミにも飽きてきた」
そう言うと手の中で大きな鳴き声を一鳴きがし、静かになる。