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困惑している私を見て目の前の男が忌々しげに舌打ちをする。
「おい、聞いてるのか?言葉が通じない訳じゃないだろ?散々勉強をしたんだ……通じてんだろ?」
「あ、ああ。言葉は通じているが……言ってる意味がよくわからない」
何とか言葉を絞り出すように告げる。
「に・ほ・ん・だ、日本。こういう名前の国を聞いたことがないかって聞いてるんだ。なんならアメリカでもロシアでもいい」
一度も聞いたことない単語を次々と出す、この男は何者なのか疑念を持ちながらも正直に話す。
「すまないが、聞いたことがない。初めて聞く名前の国だ」
「お前もか……知ってる奴が一人もいないってことは……そういうことなんだろうな」
仕方なく納得した雰囲気を出して、元の場所に戻ろうとする男に思わず声をかけてしまう。
「待ってくれ、それが貴方の国なのか?初めて聞く名前なんだが……君は一体何者なんだ?いや、そもそも何をしてここに閉じ込めらているんだ?」
男はこちらをジロリと見てベッドだったものに腰をかける。
「日本ってのが俺の国だ」
呟くように言って、続ける。
「俺はそこで仕事をしていたら、いつものようにな。煩い上司の下で。けどよ、いつもと同じように仕事を終えて帰れろとしたら……急に眩しい光に包まれて、知らない場所に立ってたんだよ、それがここの貴族の館だった」
そこで私は一つ思いだす、ここの領主の館に不審者がでたということに。
あの時は先走った自分の仲間だと思ったが、誰一人館に忍び込むとはしておらず、安堵した記憶がある。
流石にそんな無謀者はいないとは思ったが、まさか目の前にいる男がその不審者だとは。
「でよ、言葉がさっぱり通じねぇんだよ。これがな。けどよ、映画でしか見ねぇような兵士が槍やら剣を突きつけてくるんだ……武器を突きつけてきたら、殺されても文句は言えないよな」
軽く笑って犬歯がのぞく。
それを見て思いだす、その不審者が館の警備兵を殆ど叩きのめしたという話と酷い有様だったということを。
「でよ、ここに入れられたんだよ。最後の奴がよう分からん力を使ったせいでな」




