忌々しき転校生
正月休みが暇なので書きました。
最近どうも調子が悪い。なにもかもアイツのせいだ。そうに違いない。なにが
ヤギューシンカゲリューだ。意味のわからない剣術使いやがって。おかげで
俺の唯一得意科目だった剣術演習で一番を取れなくなっちまったじゃねーか。
そのうえ、なんであんなにモテるんだよ。ちくしょう。世の中不公平だ。ちくしょう。
「何を暗い顔してるんだよ。アレックス。」
「うるせえぞトーマス。お前だってシドーは気に食わないだろうが。」
「ん~別にオイラは彼との間に何もないけど。」
「いや学力テスト2位だったろ。」
「あぁ~そのことねぇ。別に1番狙ってるわけじゃないから、どうでもいいよ。」
なんでコイツは、こんなに穏やかなんだ。俺とは真逆の性格のようだ。どちらにせよ
勉強と武術の両方で意味のわからない転校生が1番を独占してやがる。この状況はマズイ。
なんとしてもリュネード王国学校の…というか俺のメンツにかけてアイツを倒さねば…。
「シドーくん、今度の休み、なんか予定ある?」
あ、あれはクラス一の美少女アンジェラさん。馬鹿な、他の淫乱クズ女はともかく彼女
まで奴の手に落ちてしまったというのか。
「ごめんアンジェラさん、今度の休みは、ちょっと用事があるんだ。」
「そうなの、残念だわ。」
シドー、てめぇえええええええ。よくも俺の愛しのアンジェラさんの申し出を断ったな。
ぜってぇに、ぶっ殺してやる。まぁ了承しても、ぶっ殺すんだけどな。
「よーし席につけぇ授業を始めるぞ。」
魔法史の授業の時間だ。俺の不得意科目だから今までは嫌な時間だった。が、シドーも
得意な科目ではない(それでも俺よりは上だが)ので、最近では少し楽しみである。
「ではアレックス。王国魔法の成立と、その時代背景について説明してみろ。」
「えっ、え~と、まぁ昔にできて…なんだかんだで今に至るんじゃないっスか。」
「アレックスお前そんなに先生と二人っきりになりたいのか…生徒指導室で。」
「ス、スイマセン全然わからないです。」
「「「あはははは」」」
教室全体に笑い声が響く。ちくしょう、どいつもこいつも馬鹿にしやがって。
あ、アンジェラさんも笑ってる。最悪だ、死のう。
「ではシドー。答えてみろ。」
ふっ、だがコイツもどうせ答えられないだろう。なんせ入って3ヶ月の余所者だからな。」
「はい。ガレア歴378年に当時の魔法省大臣ヴィヒテンシュタインの助言により同じく
当時の国王リーフィア女王陛下が発令しました。当時、リュネード王国は三方向を魔王軍
に囲まれていました。身体能力の高い彼らに対して肉弾戦を挑むのは無謀であるため魔法
によって王国はこれに対抗しました。ただ魔法といっても当時は流派が多数に分かれて
おり軍として行動するには、その戦闘手段に統一性が欠けていました。そのため当時の
王国は多数の流派の良い所をとり一つの流派にまとめることで軍としての統一性をもたせ
魔王軍に対抗しようとしました。以上です。」
「うん大体あってるぞ、よく勉強したなシドー。」
「「「パチパチパチ」」」
って、おぃいいいいいいいい。なんで、なんで、なんでだぁあああああああああ。
マジかよ、アイツまた苦手科目を克服しやがった。隣を見るとトーマスも拍手している。
ちくしょう裏切り者め。
「なにヘラヘラしてやがるトーマス。お前、得意科目ですら負けるかもしれねーんだぞ。」
「あはは~そうかもねー。」
「ちっ、余裕かよ。相変わらずムカつく野郎だな、お前は。」
こいつトーマスは魔法史オタクだ。事実、コイツが学会で提出した論文で翌年の教科書が
何度か書き換えられている。それをコイツが使っているのだから不思議なものだ。
「あっ、そういえば次は剣術演習だね。勝算はあるの?」
「当たり前だ。次こそシドーの野郎をぶっ潰す。」
そして剣術演習、実力の近い者同士で組むのがこの授業だが俺はシドー以外の奴なら
圧勝できので自然な流れでシドーと再選することになった。ぜってぇに勝つ。
「いつもながら凄いやる気だね。アレックス君。」
「当たり前だ。今日こそ、お前をぶっ潰す。」
お互いに剣に見立てた棒を抜く。ほかの奴らも同じだ。担当教師の号令が出るまで待つ。
そして担当教師が目を見開いてから手を振り上げて号令を出した。
「始めぃっ。」
おっしゃあああああ。今まで4回も負けたんだ。今日こそ勝つ。