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9.害虫駆除

今回、少し残酷なシーンあります。

苦手な方は御注意を。

 教えてもらった宿、臆病者の巣窟に行くと、一階酒場二階以上宿という定番仕様になっており、カウンターには痩せぎすでネズミのような容貌の男が立って仕込み作業をしていた。


「泊まりたいんだが部屋は空いているかな?」


 チラリとこちらをみると、ボソリと呟くように返してくる。


「朝夕付けて銀1。三刻九刻が飯だ。」


 街の一般的な住人が一月あたり銀貨10枚で暮らせるんだから確かに高いな。

 飯は一刻=2時間のはずだから、6時、18時か。


「10日分頼む。それから風呂はあるかな?」


「うちに貴族が泊まることはねえ。バルネにでも行くんだな。湯を使いたいだけなら銅5だ。」


 バルネ?公衆浴場かな。


「判った。後でバルネに行くことにするよ。飯はここで食えるんだよな?」


 そう言って、銀貨を10枚カウンターに置く。


「2階突き当たり。ここ以外で食えると思うならそこに行け。うちは困らねえ。」


 素早く銀貨に目を通して鍵?を出してくる。それはくすんだ深緑の石?で出来た長さ5cm程の円柱で、細かな紋様が刻まれていたが、俺がよく知る鍵山は無く、これでどうやって施錠解錠できるのか不思議だった。まあ、行きゃーわかるだろ。

 しかし、この愛想の無さでよく潰れ無いな、この宿。


 二階突き当たりに行くと、ドアノブの下部に、鍵と同じ素材の板が取り付けられていた。鍵穴は無い。

 鍵で触れてみると、リィンという音がする。これで開いたのか?ノブを捻ると扉が開く。試しに扉を閉めて再び触れると、今度は開かなくなった。

 なるほど、タッチイベントをトリガーに開閉が切り替わる魔道具なんだな。魔道具は高いって言うし、セキュリティがこの宿の売りか。


 六畳程の広さの部屋の中にはベッドと小さなテーブルに椅子が一脚あった。壁にはクローゼットが設えられており、窓はからはギルド前の大通りの様子が見えた。ベッドは羽毛布団とはいかないが、清潔で気持ちよさそうだった。


 デイパックからスマホ--モバイルブースターを魔法で充電できたので、隙を見て充電してある--を取り出して時計を見ると午後3時。

 買い物に行きたいが、やはりスキルの使用感を試してみたい。お約束のようにゴロツキにでも絡まれたら速度の問題で対応しきれないし。

 ということで、1時間程試せるスキルは試してから、無愛想な主人に鍵を預けて宿を出た。

 主要なお店の場所を聞いてから、であるのは言うまでもなく。


 まずは武器屋だ!ロングソードとかフランベルジュとか胸熱!買わない(つかえない)けど。

 武器屋に着くと、無口で頑固なドワーフに一目で才能を見抜かれるとかは無く、普通におっさんに応対された。獲物の解体に使える大きめのナイフをベルトにつける鞘と合わせて銀貨3枚で購入。更に砥石を銀貨1枚で購入し、使い方も習っておく。魔術士が持つ杖の類は魔道具となり、武器屋では扱っていないとのこと。魔道具屋での販売となるそうだ。

 ただ、もし杖の効果が魔術効果上昇ではなく魔力効率の向上であった場合、約100億の魔力を持つ俺には意味が無い。

武器屋では魔道具の詳しい説明は出来ないということなので、オススメの魔道具屋を聞いて店を出る。

 教えてもらった魔道具屋は宿で聞いたものと一緒だった。魔道具屋が一軒しかないということは無いらしいので期待出来そうだ。

 位置関係としては宿→武器屋→防具屋→魔道具屋であったため、防具屋へ向かう。


 防具屋へ向かう途中、路地からくぐもった声が聞こえてくる。

 あーうー、地雷くせえ…関わりたくねー……。

 気づかなかったことに……したら確実に後悔するので、数瞬躊躇った後、ため息を詠唱に変えて声の方に向かって路地に入っていく。


 路地の奥には、散らばるパン、のしかかる大男、チラチラと周囲を伺うがのしかかられている獲物が気になる小男、のしかかられてもがいている猫耳女性、という光景が広がっていた。


「ぐへへへ、大人しくしてればすぐ天国に行かせてやるよ。」


「あ、兄貴早くしてくださいよ。今度は壊れる前に俺にも味わわせて下さいよね。」


 性犯罪者かよ。駆除決定。二人だから速攻になるのが残念極まりない。 


「風よ、風よ、圧縮せよ、槌となりて彼の者を撃て、風槌」


 小男の頭目掛けて首の骨が折れる程度には圧縮し、速度もつけた風のハンマーを放つ。

 間髪を入れず、まだ何が起きたか把握出来ず下ろしたズボンで身動きが取れない大男に向かって一気に走り寄り、膝にさっき買ったナイフを突き刺す。どっかのラノベで見た話では、膝には痛覚が集中しているとか。


「ぐあああああっ!!痛えええっ!」


 大男は野太い声で悲鳴を上げながら、転げ回る。

 思い切り頭を蹴飛ばして黙らせると、猫耳さんに声をかける。


「大丈夫ですか?怪我とかありませんか?」


 う…上着が破れて、スカートがずりさげられてエラい格好になってるよ…。


「う…うぅ…。」


 恐怖が抜けないのか、安堵なのか、身を起こしたものの破れた上着をかきあわせて、泣いている。


「これ間に合わせに着て下さい。落ち着いたら替えの服を買いに行きませんか?誓って変なことはしませんから。」


 そう言って、今着ていた上着を脱いで渡す。若干肌寒いが、レイプされかかった女性の苦痛を考えたらどうということは無い。

 散らばったパンを叩いて埃を落としながら集めて、同じく転がっていたカゴに入れる。

 ううん、これ、食えるのかなあ。

 まあ、聞いてみて食えないようならこれも買い直しだな。

 そんなことを考えていると、突然脳裏に、小男が背後からナイフを手に心臓に突き込んでくる映像が浮かぶ。


 生存の二重化を発動して左右両方に避ける。と、右側の自分の背中にナイフが突き立てられる。

 

「きゃあああっ!ああ!?」


 猫耳さんが悲鳴を上げるが、途中で疑問形に音が変化する。ナイフが刺さったはずの俺がいなくなったからだろう。

 さっきの魔法で死んでないし、無言で襲いかかってくるし意外に強いなコイツ。

 小男も刺したはずの俺が消えた事で踏鞴(たたら)を踏んでバランスを崩す。


 思い切り良く、小男の後頭部に拳を叩き込む。

 ズガンッという音と共に小男が倒れ伏す。倒れたことは倒れたが、足がピクピクと動いている。元の(・・)筋力が貧弱だからなあ。

 今度は起きあがらないように、頸動脈のあたりに男の服をかざしながらナイフを入れておく。

 大男の方が起きても困るな、と思ったらそっちは首がほぼ直角に曲がっていた。

 ふう、駆除完了。


「あ、あの今のは一体…。確かに背中から刺されたはずなのに…。」


 お、驚愕が恐怖を超えたかな。俺の上着を着て下もちゃんと服を整えている。あの格好はちょっと目に毒だ。


「秘密です。」ニッコリ。


「えぇっ。あ、あの、助けてくれてありがとう。わ、私ルチアって言います。」


 あ、びっくりして立っていた耳がペタンとなった。うむう可愛いなあ。


「コーキと言います。今日登録した新米傭兵です。ルチアさんは何でこんな裏路地に?人気も少ないし危ないでしょう?」


「昼間はそこまで危険なことは無いし、いつもならお兄ちゃんと一緒だから。今日は偶々お客が来て手が放せなかったから。あ、お兄ちゃん、この先で魔道具屋をやっているんです。」


「ええと、もしかしてエフレムさん?」


「そうです!知っているんですか!?」


「いや、《臆病者の巣窟》で教えてもらったんですよ。これでも魔術士なので。」


「ええっ?だって、あの身のこなしといい力といい…とても魔術士とは……」


「ああ、強化魔術が得意だし、魔力にはちょっと自信があるんですよ。流石にもう魔術は解いていますけどね。」


 真っ赤な嘘だけどな。思考分割で今も筋力強化、拳外側と靴の硬質化を維持中だ。強化魔法も宿で初めて使ったし。


「元々エフレムさんのお店には伺うつもりだったし、案内してもらえませんか?送らせて下さい。もし良ければパンも弁償しますよ。」


「そんな、助けてもらうばかりか弁償なんて…。」


「いいんですよ。運良く今は懐が暖かいですし、服も良かったら贈らせて下さい。このまま帰って男はあんなクズばかりと思わせてしまうのは耐え難いんです。」


 少し(おど)けながら言うと、元々垂れ気味のルチアさんの目尻が下がって笑みが零れる。


「ふふふ、コーキさん面白い。じゃあ御言葉に甘えてパンだけ。」


 そうやってルチアさんの案内でパン屋を回った後、魔道具屋に向かった。

魔法による強化で筋力は大体2倍にしています。

硬質化はタングステンを意図して魔法を使ったものの、レベル不足で鋼鉄くらい。

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コーキ

年齢:31

ギルドランク:銅 ギルドレベル:1

特技:魔法

種族:魔人

加護:黒神の加護

契約:黒神レベル2

レベル:5 経験:12/450

スキル:致死の未来、思考分割、気配察知、生存の二重化


体力:45/45

魔力:9,999,998,500/9,999,999,999

腕力:8

器用:10

敏捷:11

知力:15

耐久:9

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