8.レベルアップ
絶賛現実逃避中につき、毎日更新が続いています。
支部長の部屋を出て、受付に戻った俺はマルファさんの所へ行く。登録料も払ってないしな。
「お疲れ様でした。それでは先程の続きになりますが、登録料銀貨10枚になりますが、お持ちですか?ギルドから貸し出すことも可能ですが。」
「とりあえず貸して下さい。緑神の森の豚鬼討伐依頼があれば、街に来るまでに狩ってきたので、その報酬次第では返済できると思うんですが。ああ、後は馬を売りたいんですが、ギルドで仲介してもらえませんか?」
少し目を見開くマルファさんだったが、すぐに柔らかな笑顔に戻る。
うん、このひとやっぱプロだな。目は全く笑ってないが。
「現在ドニエプル候から特別討伐依頼が出ているため、相場の1体銀貨3枚に対して割増で銀貨4枚、買い取り上限無しとなっています。討伐証明を見せていただけますか?」
ふむふむ。これなら一括返済しても、馬がいくらであっても宿代確保した上で買い物もできるな。
「じゃあこれ、5体分です。」
そう言って、腰に着けていた小袋--もしも豚鬼に遭遇した時に必要だろうということでアンテさんにもらったのだ、そこまで想定するならナイフも欲しかった--から耳を取り出す。
「…………。」
あ、眉間に手をやって揉みほぐしだした。まあレベル1の新人傭兵が単独で討伐できるようなものじゃないしな。
「5体ですので、銀貨20枚になりますね。返済はどうなさいますか?」
笑顔に戻ったが、コメカミに血管が浮いている。
「報酬から一括返済します。」
うん、見なかったことにしよう。
「それでは登録料の返済分を差し引きまして銀貨10枚です。馬の売却仲介ですが、ギルドでも取り扱っております。市場の8割程になってしまいますが。それでもよろしければ、私が査定いたします。」
「手数料を考慮していましたので、8割で構いませんが、何故ギルドが馬を?」
「馬の維持には費用もかかりますし、依頼で一時的に利用したいという方も多いのでギルドで一定数の馬を確保しております。」
なるほど、レンタルか。割と洗練しているもんだな。あー魔術による誓約で、契約に法的ではない強制力を持たせられるから成り立つわけか。こういう所は科学を基礎とした文明よりも進みやすいんだな。
そのまま査定してもらって、銀貨32枚を受け取る。
「あと、白神の礼拝堂を貸してもらえますか?」
「レベルアップですね。二階に上がってすぐ右手の扉になります。」
そう、この世界は白神の礼拝堂という所でレベルアップできるらしい。魔物や人を殺害すると、その魂の力を一部吸収して通常の人を超えることができる。魂の力=経験値という定番仕様だ。
部屋に入ると白神の象徴なのか、白い円柱が立っていた。ええと、確か…ひざまづいて魂の昇華を願うんだよな。
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コーキ
年齢:31
種族:魔人
加護:黒神の加護
契約:黒神レベル1●
レベル:5 経験:0/450
スキル:無し●
体力:25▲
魔力:9,999,999,999
腕力:8▲
器用:10▲
敏捷:7▲
知力:15▲
耐久:7▲
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円柱から少し浮いた所にギルドカードとは少し異なる内容が浮かぶ。
▲が成長可能で、●が追加または成長可能だ。人によって成長度合い、成長限界も異なるし、取得可能なスキル、魔術も異なるらしい。見事にゲームっぽいインターフェースだが…ユーザーインターフェースは解りやすさが基本だよな。
1レベルあたり2箇所ないし1箇所を2回成長させることができるのだが……。ゲームだったら間違いなく極振りしてピーキーな性能にする。
ゲームじゃないしな。命がかかる状況で極振りなんてできん。とりあえず取得可能スキルと契約は何があるんだろ?
契約:
・黒神
・橙神
・緑神
・青神
スキル:
・致死の未来
・思考分割
・気配察知
・生存の二重化
あれ、意外に少ないな。しかも名前からすると全力で後ろ向きというか、生存特化というか…。
ともあれ、切実に取扱説明書が欲しいな。
よし、スキルは全部取って、黒神の契約レベル上げて、体力2回、敏捷2回、耐久1回だな。
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コーキ
年齢:31
種族:魔人
加護:黒神の加護
契約:黒神レベル2
レベル:5 経験:0/450
スキル:致死の未来、思考分割、気配察知、生存の二重化
体力:45
魔力:9,999,999,999
腕力:8
器用:10
敏捷:11
知力:15
耐久:9
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これならなんとかやっていけそうな気がする。1レベル分まるまるつぎ込んだのに人並みな敏捷がそこはかとなく哀しいが気にしたら負けだ!
スキルは取ってみたら効果が判った。
致死の未来:
生死を決定付ける何かに遭遇した際、死に至る映像が見える。
思考分割:
魔力を消費して同時並行に複数の思考が可能となる。
気配察知:
魔物を含む生物の気配を半径10mで感じとれる。
生存の二重化:
魔力を消費して2秒程度までの取り得る行動を同時に2つとる。致死行動は消滅する。どちらの行動も致死でなければ無作為にどちらか片方の行動が消滅する。
レベルアップを終えて三度マルファさんの所へ…と思ったら他の傭兵の受付をしていた。
ギルド内の酒場に行くことにする。なんだかんだで昼飯食ってないし、宿の場所も聞きたいし。
早速カウンターに着くと、給仕のおばさんを呼ぶ。
「小銀貨1枚くらいで何かオススメの食事と、それに合う酒をお願いできるかな?美味い酒なら超えても問題ない。」
「はいよ。ちょっと待っておくれ」
おばさんは恰幅のよい体を機敏に動かして、厨房に声をかけにいく。
待つこと10分ほど、料理の盆と酒のジョッキを手におばさんがやってくる。
「はい、お待ちどう。そんなひょろっとした体して傭兵なんて務まるのかい?オマケしといたから、シッカリ食べな!ガハハハ」
ガハハハてあんた仮にも女でしょうが…。湯気を立てる肉に、山盛りの黒パンとカブらしきものが入ったスープが食欲をそそる。しかし、何より目を惹くのは木製のジョッキだ。
「俺は魔術主体で戦うから、腕力なんか要らないの。それよりこれ、ビールじゃないか?」
そう黄金色のピルスナーでは無いが、確かにビールだ。
「そうさ、ドニエプル候がホップ栽培に力を入れててね。この辺の名産なのさ。さあ冷めないうちに食べな!折角の料理を不味くする奴はぶっ飛ばすよ!」
「ハハ、それもそうだ。いただくよ。」
まずはビール、15℃くらいだろうかやや冷え位だが、口に含むと香りが素晴らしく、シッカリとした苦味と僅かに酸味がある。
「うまっ!」
続いてナイフで肉を切り、ソースを絡めて食べる。鶏らしきその肉からは肉汁とともに旨味が口の中に広がる。臭味などは無く、皮目がパリッとしているが肉は柔らかく、強めの塩味が効いたソースと良くあって実に美味い。
そこへビールを飲むと口の中の脂がすっきりと洗われ、ビールの味わいが広がる。
ここはなんだ、天国か。
夢中で食べて飲んだ後--結局ビールは2杯お代わりした--、おばさんに声をかける。
「美味かったよ。ところでこの街は初めてなんだけど、オススメの宿って無いかな。」
「美味かったのは、言わなくても食べてる様子でわかるさね。ギルドの二軒隣にある《臆病者の巣窟》がよく傭兵に使われているよ。清潔だし、主人は信用が置けるよ。少し相場より高いがね。」
「そっか、じゃあそこに行ってみるよ。臨時収入で懐も暖かいしね。飯と酒、いくらになった?」
「小銀貨2枚だよ。」
「そんなんで商売になるのか?ほい、銀貨だから釣りくれ。」
「大丈夫さ、ここには美味い飯と酒に金を惜しまない、腕白坊主どもが馬鹿みたいに来るからね。儲かってしょうがないさ。ガハハハハ。はいお釣り」
お釣りを受け取った俺はギルドをでて、宿に向かった。
風呂、あるといいなあ。
少し成長。
能力値は、大体9~11くらいが平均値です。
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コーキ
年齢:31
ギルドランク:銅 ギルドレベル:1
特技:魔法
種族:魔人
加護:黒神の加護
契約:黒神レベル2
レベル:5 経験:0/450
スキル:致死の未来、思考分割、気配察知、生存の二重化
体力:45/45
魔力:9,999,999,899/9,999,999,999
腕力:8
器用:10
敏捷:11
知力:15
耐久:9
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安価に食肉が提供される理由としては、魔術、魔道具、魔物の存在があります。
四輪作は導入されていませんが、食糧生産能力は中世暗黒期よりは確実にあります。